米国では4月24日超党派で提出されたTikTokの事実上の禁止法案が可決し、運営主体が米国の承認する企業への売却がされるか使用できなくするかを迫った。つまり会社そのものが米国政府として認められる企業が所有し運営することができれば使用できるが、そうでなければこのソフトは利用できなくなると言うもの。

 

ティックトックは中国の会社が開発し、短い動画を配信して、それに着く広告収入で制作者や運営会社が利益を得ると言うもので、若者を中心に広がっている。米国では1億数千万人の利用者がいて、人によってはこれで収入を得て生活している者もいるとし、この法律は死活問題だとも言っている。

 

また一方ではこのアプリの「中毒性」を問題にし、これにのめり込むとあらゆる場面で動画撮影を心理的に脅迫されるようなことも起こり得て、これを問題にする者もいる。しかし今回米国議会で問題にされたのは、会員になった人の位置情報が常に提供され、あらゆる情報を運営会社が吸い上げることができる点である。

 

特に国家情報保護法のある中国では、中国国民はあらゆる国が求める情報を提供する義務を負い、ティックトックの運営会社はその吸い上げたものを提供しなければならない。現代は既に情報戦のさなかにあって、ティックトックの法案への反対を会員に働きかけて一斉に行ったことで、逆にこの危険性が露わになった。

 

また中国も本来資本主義的な思考方法なら、育てた企業を高額で買収されるならそれも一つの選択肢であるはずが、それ自体に反対もしている。つまりこれはティックトックの運営主体を売り渡すことに反対しているのであり、その運営自体に大きな利益があると言っているに等しいのである。

 

ティックトックの運営には、我が国ではもっぱらそれを利用する個人の利益が問題にされ、巷ではどう安全に利用できるかと言ったノウハウ情報が出ている。無論個人情報を流用されそれを悪用されることも大きな問題だが、様々な映像情報が気軽に提供され、それが位置情報と結びつくと、機密情報が漏れることは当然ありうるのである。

 

そして米国で実際起こったように、そのアプリの会員を焚きつけることで、反国家的な動きを作り出すこともできる。なおトランプ氏がこの禁止法に反対する理由は、政府がこのような情報アプリを規制することで、トランプ氏の情報発信も妨害する手段とすることを恐れているからだと言うが、根は深く広いのである。