日本初の小型月着陸実証機SLIMは令和6年20日無事月への着陸を成功させたが、これは世界でも5番目の成功で且つ極めて精度の高い着陸であった。従来の月着陸船は目標地点に対し数キロの範囲での誤差を許容したものだが、SLIMはこの誤差の範囲を100mに抑えたもので、極めて高い制御技術の成果であった。

 

この月着陸船プロジェクトの主体はJAXA(宇宙航空研究開発機構)であるが、この衛星の製作を担当したのは三菱電機である。日本での衛星製作メーカーはNECと三菱電機だが、NECはライセンス生産を中心に行ってきたが、三菱電機は自主開発に行ったという特徴がある。

 

今回の衛星の最大の目的は、「降りられる場所に降りるのではなく、降りたいところに降りる」ということで、詳細はまだだが概ねうまく言ったと評価される。技術的な特徴は光学的な画像確認によって、自分の位置を修正し目標地点に自律的に着陸できるというもので、その技術が実証できたことは大きな成果であろう。

 

また着陸後の記者会見では、着陸の成功は寿ぎつつも太陽電池が作動していないことに質問が集中したが、太陽電池が物理的に破壊された可能性は低いと述べられた。月の一日は2週間で昼夜が分かたれるので、太陽の向きによって太陽電池が復活可能性もあると発表されていた。

 

月の環境は太陽が当たるときは100度を超える高温となり、夜になるとマイナス200度の極寒の環境となる極めて厳しいものである。したがってSLIMはこの厳しい環境の中で生き延びなければならず、既に得られたデータによって最大限の解析を行いまた太陽電池の復活など今後に期待したいと思う。

 

今回の衛星軌道の精緻な制御は、我が国の誘導技術の発展に極めて貢献するもので、物騒な話ではミサイル技術にも応用可能なものでもある。したがってこの技術が無原則に、特に敵対的な国家に渡らないような注意を神経質に行って欲しいと強く願っている。

 

SLIMは(Smart Lander for Investigating Moon)の頭文字を取ったネーミングだが、文字通りスマートで今後の宇宙開発に資することを期待する。記者会見でも述べられていたが、将来の火星探査などへの応用も期待できるようで、今後の成長発展に期待したい。