上野の国立博物館平成館で興福寺の国宝阿修羅像が展示されている。観に行ったのが平日の開館時間直後だったが、既に長い行列が出来ていた。



中庭に入り、平成館の前で入場規制を受け時間差で入場した。八部衆像と十大弟子像も興福寺所蔵の14体が展示されている。



十大弟子のスリムな像を見て、阿修羅もその一つである八部衆の神々を拝観する。矢張り阿修羅像の美しさには目を引かれた。



広隆寺の弥勒菩薩像や、薬師寺の月光・日光菩薩像など昔修学旅行で拝観した。近年再び拝観して、その頃はまだそのよさを感じる自分が出来ていなかったことに気が付く。



阿修羅は戦闘神であり、帝釈天と何度も戦って終に勝てなかった神とされている。しかしこの阿修羅像を見てそれを想像することは難しい。



正面のお顔は少年のように凛々しく、しかし表情は憂いを含んでいる。左右のお顔もまだ幼さを感じさせる。



衣装は細かい細工が施されて薄い質感を感じさせるように作られており、あるはずもない地肌が透けて見えるようですらある。戦争の神と見られないのは、少し悲しいような幼い表情と細い腕にも理由があるかもしれない。



人は矛盾に満ちた存在で、阿修羅像を観て自分の中にある心の襞を映し、感慨を呼ぶのではないか。先人の繊細で柔らかい心に触れた気がして、その日一日平和な気持ちであった。




団塊世代の晩節-阿修羅展