だったんだゃんで | I can not do

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長次郎は、深窓のお嬢様だった母ちゃん、ジョセフィーヌを手籠めにし、孕ませて逃げた薄情者の渡世人の名前だ。
豪奢なボビンレースのハンカチで、母ちゃんは時々涙を拭きながら、窓辺でな恋しい人の名前を呟いていた。「長次郎さんに、会いたい……。長次郎さん……どこにいるの?」って、ぽろぽろと真珠のような涙が零れ落ちた。

……こいつが母ちゃんを捨てて逃げたせいで、俺は何匹もの兄弟を失ったのだ。
足元で冷たくなっていった、小さな躯のぺったんこのお腹を、俺は決して忘れない。

狗神は白狐さまに打ち付けていた凶暴なものを引き抜くと、まるで時代劇のお侍さんが人を切った後に、刀をぶんと振って血を払うように男前にちんこを振って、こちらに向き直った。ぬらと長大に輝く刀身が、こいつは只者じゃないと告げていた。
思わず、その場で俺は母ちゃんを思って慟哭した。
鏡の中の母ちゃんは、ふわふわとした銀色の髪に少しメッシュで金色が入っている、とても綺麗な女だった。琥珀色の大きな瞳からは今にも涙が溢れそうになっている。
ほら、母ちゃんが泣くから、俺だって……つられて泣くじゃないか……。
あの日別れたきりの、細くて綺麗なふわふわの母ちゃんがそこにいた。

「かあ……ちゃ~~ん、うっ……うっ、え~ん……?」

でも、よしよしと俺を抱きしめて宥めてくれたのは、母ちはなく、いたいけ貨物存倉な小犬(俺)の前でがんがん交合していた狗神と祠の白狐さまだった。

「おまえ、ジョゼフィーヌにそっくりのいい女…じゃねぇ、いい男になったじゃね~か。何せ、優性遺伝のハーフだから当たり前か。」

「ちがわいっ!おまえなんかっ。かあちゃんと俺たちを棄てたくせにっ!」

ふっと細くなった男の視線は、優しかった。

「そうだよな~、そう思われても仕方ねぇな。」

「なんで、大事なことを言わないかね、この男は。捨てたんじゃないだろう。あれは、狗神になる為の掟で必要って、言ってやればいいのに。仔犬が誤解したままじゃないか。」

「自分、不器用ですから。」

向こうの方で、情事の後の色気がしたたっているような白狐さまが、扇情的な搜索引擎優化仕草で膝を立てて指先で俺を呼んだ。

「おいで。仔犬。」

俺は目を見開いたまま固まっていた。

「筆下ろししてやろう。犬妖でも狗神の子なら、もう大人になっているはずだろう。」

「で……でも、まだ俺、乳離れも済んでない仔犬だし……。」