「愚者」と「13」の共通点から | タロットの煌めき マルセイユタロット活用術

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伝統的なマルセイユタロットを使っての、自分と人のために活かせる知識と方法をお伝えしています。

マルセイユタロットのカードは、すべては異なっているのですが、よく見ると図像が似たようなカードもあれば、意味的に同じようなことを示唆しているカードもあります。

 

そういう意味では、ある事をテーマにグループ分けも可能ですし、逆に言えば、タロットカードをあるグループに分けることができたのなら、そこからグループのテーマ、共通する意味というものが浮上してくるでしょう。

 

さて、一見似ていないようで、その象徴性を学んでいく(つかんでいく)と似ていることがわかるというカード同士、組み合わせもタロットにはあります。

 

その一つ(の組)として、「愚者」と「13」を取り上げたいと思います。ただし、ここではマルセイユタロットの話をしておりますので、ほかのタロット種では今から話すことにはなりませんので、ご注意ください。

 

 

  

CBD Tarot de Marseille by Dr. Yoav Ben-Dov, www.cbdtarot.com

 

 

「愚者」と「13」、一見すると、あまり似ているところがないように思えます。いや、それどころか、絵柄や雰囲気はまるで違うように見えるかもしれません。

 

実際、図柄を見ていただければわかるように、「愚者」は旅姿の人物でどちらかといえばカラフルな服装をしており、深刻さも感じさせない、ラフな雰囲気があります。

 

一方、「13」は、全体的に黒い色が目立ち、骸骨姿の人物が大きな鎌をふるっているところからしても、何か恐怖や、ただならぬ雰囲気、真剣さを感じさせます。

 

そうすると、真逆とも言えるこの二枚の印象となります。

 

端的に言えば、楽観と悲観、気軽さと気重さ、おふざけと真剣さ、楽しさと恐怖みたいな対比・対立にも思えてきますし、それはその通りのところもあるのです。

 

ただ、あえて二枚の共通点を見るとしますと、どちらも人物が右に向かっています。

 

マルセイユタロットは方向性にも意味があり、右方向は進展や発展、変革、未来を示すと考えられています。(※図像的には、口伝の中で、数々の厳密な意味での共通点があるのですが、それは口伝ですのでここでは言及しません)

 

ということは、特に「13」はそう見えないかもしれませんが、右に向かっているのなら、何らかの進歩を示しているということになり、どちらも止まったり、戻ったりするわけではなく、成長のために前進していると考えられます。言い換えれば、(「13」でさえ)前向きなのです。

 

また、「愚者」は明らかに移動しているように見えますが、「13」も、さきほど言ったように、向かって右方向に進んでいると考えますと、両者には進む、移行するという共通項があることに気づきます。

 

ただ、その移行の質が違うのです。

 

「愚者」は物理的に移動しているように見えますし、またここが盲点でもあるのですが、左側(の何らかのこと)から逃げていると見ることも可能なのです。

 

そして「13」は鎌をふるっています。西洋的に言えば、この鎌は麦を刈る鎌で、人を傷つける武器ではありません。

 

ただ刈ることが強調されて、骨姿とあいまって怖い意味合いにされているところがあります。けれども作物の収獲のための鎌ですから、むしろ、喜ばしいところもあるのです。

 

ということは、「13」の移行とは、物理的にただ進んだり、逃げたりするというより、精神性も含めて、何か自分が撒いた種が実って、それを刈り取るような象徴性があり、過程を経て、何らかの実り(結果)を得てから次に進という意味が見出されるのです。

 

よって「13」の移行・進展とは、自らの行為(の結果)を受け止めて自分を改革し、次に向かうことになるのです。一言で言えば、逃げられない進行であり、言わば、先に進むためには、終わらせたり、処理を施したりすることが求められるのです。

 

この二枚の共通性(のひとつ)は先述しように、進み、移行するということなのですが、それぞれで性質が違うということが重要です。

 

ですから、タロットリーディングで「愚者」が出れば逃げることもOKですし、楽しく移動すること、旅をしたり、気分を変えるために引っ越ししたり、簡単に転職してみたりすることも許容される感じになります。

 

本来なら「愚者」は冒険の雰囲気のあるカードですが、左側から逃げていると解釈すれば、「君子危うきに近寄らず」のように、あえて(左のものから)避けることも意味されます。

 

しかし「13」の場合は、「愚者」とは違い、きちんと状況(他人)や自己と向き合うことが必要でいい加減なまま次に向かうと、逆に厳しい状態になるおそれがあります。

 

ですが、「13」も「愚者」と共通して、進むこと、移行すること、成長への視点があるわけですから、「愚者」よりも大きな改善、変革、チェンジの可能性がある(というより、それを志すこと)と言えます。

 

「13」は厳しいかもしれませんが、それも撒いた種がそのような形で実ってきたわけですから、放置せず刈り取ること、すなわち真剣に対処し、うやむやにせず、きっぱりと終結を選択し、新しい道に進むこと、新しい自分になること、よりよい環境にしていくことの決意により、「13」のエネルギーが動き、あなたを新世界へと導くでしょう。

 

また、タロットリーディングで「愚者」と「13」が一緒に出るような場合、一刻も早い脱出を表している場合があります。それは逃げて自分を守るというようなケースも考えられます。

 

「13」は逃げられないと言いましたが、それは逃避することが不可能と言っているのではなく、むしろ逃げも含めた自己改革を示唆していることがあります。

 

「13」の場合、安易にただ逃げることがダメなだけで、逃げるためには何を行うべきか、問題を解決して脱出するにはどうすべきかということを検討し、実行する必要があるのです。

 

ましてや、単に逃げもOKな(笑)「愚者」も同時に出たとなると、退避、脱出、変転のススメが強く出ていると見られます。

 

日本人では結構我慢してしまう人も多くて、そのために逃げ時を誤り、心身の故障や経済的損失、依存性の膠着、洗脳完成に陥ってしまうようなことがあります。

 

視点を変えれば、ほかの方法や生き方もたくさんあるのです。最悪の事態にならないように、そして本当の成長のために次に向かうことでも、逃げることも選択のひとつと考えておきましょう。

 

そして、「愚者」と「13」では、その逃げにも性質が違うように、「進む」に対しても、がむしゃらにただ前進するのではなく、状況により分けて対応していくことも考えましょう。