ツツジ
先月、公立高校の合格発表の日、生徒のK君のお母様から、ラインが入った。
「お陰様で、希望のＨ高校に合格しました！」
「それは良かった!!!
おめでとうございます🎊」
「ありがとうございます。それで、お願いがあるのですが。高校に入ったら、ピアノに触れなくなるので、ラ・カンパネラを春休み中に弾けるようにしたいと言ってます。大好きな曲なので、少しでも弾けるよう願いを叶えてあげたいと思います。先生のご都合は、いかがでしょうか？」
ギョギョ!!!
ラ・カンパネラ
ラ・カンパネラですって？!!!
プロでも難しい、あのラ・カンパネラ!!!
それを、なにぃ？
春休み中に弾けるようにですって？
2週間しかないじゃん！
マジですか！😨
Ｋ君、確かに技量はあります。
ラ・カンパネラだって、弾けると思います。
但し、2、3年掛けたらの話。
いくらなんでも、2週間では。
無理!!!
なんて返信しようか…と悩んでいたら、またお母様からラインが。
「練習を始めたのですが、思ったより難しそうなので、最後の2ページだけお願いしたいそうです」
（笑）（笑）（笑）
曲の一部分だけを弾くなんて選択肢、考えた事なかったなぁ。
またそんな事言う生徒もいなかったし。
こんな事初めてです。
思ったより難しそうだなんて。
楽譜を見て、初めて知ったか、この曲の凄さを！
（笑）
最後の2ページだって、オクターブばっかりで、テンポ速いし、手の小さい私は、どうやったって弾けないけど、手が大きいＫ君ならできるかも。
ま、本人がそう希望するんだからいいでしょう、やりましょう。
と言う訳で、それから一週間後、レッスンに来ましたよ。
どれだけ弾けてるか。
まず弾いてもらいました。
あら、意外と弾けてるじゃない。
最後まで…と言っても、最後の2ページね。（笑）
止まらずに弾ける。ゆっくりだけど。
「思ったより弾けてるじゃない」
「やり始めたら、音がすごく飛ぶんで、とても無理だと思ったけど、最後の方は、弾けそうだなと思ったから」
「そうね、なんとかなりそうじゃん」
「本当は、最初から全部やるつもりだったんです」
春休みは、暇だろうから、ピアノに触る時間をたっぷり取れると思いきや、クラスの打ち上げだの、部活のお別れ会だの、高校のオリエンテーションだの、色々入って、練習時間が思った程取れないと分かって諦めたらしい。
中学の3年間、バレーボール部だったＫ君。
一時、指導者が厳しくて、バレーボールが嫌いになり、入る部を間違えたと悩んでいました。
2年の時、指導者が代わり楽しくなったので、高校も、バレーボールを続けたいと、県内で四強に入るH高校を受験。
通学に１時間半もかかるのが難点。
都会と違って交通の弁が悪いこの県は、自転車とバスと電車を乗り継いで行かなければならない。
しかもバスも電車も本数が少ないので、一本乗り遅れたら、１時間待ちという事も。
これから暖かくなるからいいけど、冬の寒い朝晩大丈夫？雨でも雪でも送迎は一切出来ないよと家族は反対したけれど、絶対やるからと、言い切ったそうです。
Ｋ君、根性あるから、きっとやり遂げるでしょう。
2回目のレッスンは、お母様も同伴。
「また、レッスンお願いすることがあるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします」
「もちろん！もちろん！そういう日を楽しみに待ってます！」
ラ・カンパネラ、いつか全曲聞かせてね。
(16分音符の連打、２つ多いけど)