昨夜の特集番組でバングラデシュの少年の特集をやっていた。
バングラデシュは世界で7番目に人口が多く、都市国家以外では最も人口密度が高い。
人口の6割は農業、7割以上が農村に住んでいる。
それでも人口密度が世界一という状況は日本では想像出来ないだろう。
ヒマラヤ山脈からガンジス川を始め多くの川が集まるデルタ地帯で高温多湿、毎年のように洪水、サイクロンなどの被害が深刻だ。
国土の60%が洪水に襲われ2000万人が食糧援助を受ける状態になったこともある。
米の生産量は世界4位で、生産量は年々増しているが消費量が多く「米の輸入国」になっている。
9歳の少年が生きる為に必死で泳ぐ練習をしていた。
3人の兄達は全員数カ月で亡くなったと言うほど医療も行き渡っていない。
水の恐怖を知り尽くした人達は水を恐れ、泳げない人の方が多い。
野人が1年間暮らした最高僻地の東シナ海の島もそうだった。
荒れてサメが多い絶壁の海は泳いで楽しむ場所ではなく、50人の島民は誰一人泳げず、漁船一つなかった。
水に囲まれ育っても泳げない、常識からは考えられないだろう。
バングラデシュでは健康、ダイエットの為ではなく、生きる為に泳がなければならないと言うことだ。
少年は毎日のように杭で囲まれた近くの沼で必死に練習した。
専門のコーチはいたがあれではまるで話にならない。
国内のスイミングクラブも同じようなものだが、両手で支えてあげて体を浮かせて泳がせる、ビート板を持ってバタ足など何の役にも立たず理に適ってはいない。
何日通ったかわからないが少年は水泳試験に合格した。
しかし無駄な体力を浪費、洪水に遭えば命を繋げない。
合格基準は25m泳ぐことと30秒の立ち泳ぎで、「自分の命を守れること」。
少年の最後の言葉は・・
「これで水汲みも牛の世話も出来る、家族の手助けが出来る」だった。
野人は数年後には必ずこのバングラデシュへ行くことを決めた。
そして3歳の幼児から高齢者まで2時間で泳げるようにして見せる。
伝えるのは、自分の命を守り、人の命を助ける泳法だ。
基本を体得すれば、応用が効くようになって命を守るレベルには1日あれば十分。
野人泳法理論は簡単で誰でも指導出来る、一つの村でやれば国土全域に広がるはず。
そして飢えないように自給の術を波及させる。
米の二期作、三期作は可能だが乾期はガンジス川の水位が低下、出来る地域は限られる。
この乾期に協生農法での生産が国土全域でやれたら食糧問題は解決に向かい、多くの人が飢えずに済むだろう。
協生農法ならこの9歳の子供にも簡単に出来るしお金など必要ない。
泳げることは家族を守ること、家族を守るにはさらに大地の仕組みを知ることだ。
彼らに最も必要なことは物資の援助でもなく自らの力で生きることが出来る術。
この9歳の少年は人間としての誇りに満ちていた。
野人もまた同じ人間だ。