しばらくすると・・・
穴は農園全面積の3分の2に広がっていた。
野人が作ったうねはもう残りわずかだ。
体はまだ鍛えてないから勝負出来ないのだが、その気もなくなった。
ここまでやられるとさっぱりしたものだ。
物事はすべて視点によって左右される。
「災い転じて福と成す」と言う言葉通り、「穴をかし」の心境になった。
野人のうねより素晴らしく、猪穴が何だか芸術品に見えて来たのだ。
協生農法研究所SEFARIがハニカムうねを考案していたが、これは猪が「食み噛んだ」うねだ。
そこで・・穴をこのまま畑にすることにした。
猪がまた穴を増やしてくれたらレタスの種でも蒔いておけば良い。
やや歩きにくいが、起伏変化に富み退屈しなくていいだろう。
それに・・水が無いから丁度良い。
穴の底は水気が多く、種も自ら好みの場所を選べる。
この畑は水源がないのが問題だった。
猪の作った畑は人の都合ではなく植物の理には適っている。
通常は「うね」を活用するものだが、この畑は深い「谷」を活用しよう。
木を植えなくても谷は半日陰になり乾燥を防ぎ、水やりの心配もなさそうだ。
「猪農園」と改名するかな・・・
「いいの?しし・・」が・・
「もういいの?・・しし」に変わった。
あらためてこのオブジェのような理想的な畑を作ってくれた猪に感謝しよう。
水源がなければ・・深く掘れば良かったのだ。
人力でここまで深い穴を掘るのは大変な労力を要する。
猪の造成が終われば、「ありがとう、あとはこちらでやるから~」と柵をすればいい。
またひとつ自然界と猪から学んだ。
全面、深い穴・・掘ってもかまわん・・・いや・・掘ってくれ。
それはそれとして・・・
今年の冬は豊富な猪料理が楽しみだな。
猪だって・・・協生農法の産物には違いない。