ヤマハのテストドライバーだった野人 1 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは


テストドライバーと言っても、オートバイではなくボートだ。

 

野人が入社したのはオートバイとボートの「ヤマハ発動機」ではなく、「ヤマハ株式会社」で当時は日本楽器製造株式会社と言っていた。

専門は船舶設計だからヤマハ発動機が妥当だろうが、予期せぬことから会社を間違えてしまった。

予期せぬこととはテーマ「連載 東シナ海流」のはじめに書いてある。

 

楽器のことなど何も知らず、用心棒兼ダイバーとして南西諸島へ赴任した。

頭はからっきしでも武術と泳力と体力に突出していたからまあ仕方ないだろう。

当時のヤマハは小型艇が中心で、今のような大型ボートは量産体制にはなかった。

 

船外機も故障ばかりで何度も漂流、野人は発動機本社で分解修理の特訓も受けていた。

文明とは縁のない極限の離島では無知が命取りになるのだ。

ヤマハの試作艇「ウォータージェット推進」の船は故障ばかりで難儀していた。

 

「こんな波の荒い海域にこんな船・・どこのバカが設計したんだ!」と・・文句も言いたくなる。

 

この島は波静かなサンゴ礁ではなく、深海から突き出た活火山島で絶壁の珊瑚岩なのだ。

乗る方は命がけで、港もなく船も通らない海ではすぐに助けは来ない。

クラッチの調子が悪く岸壁に激突しそうになった時は、船尾から海に体を乗り出して変速機を思い切り鉄拳で「ガン!!」と殴ったらやっと後進が入り事なきを得た。

武術と強靭な腹筋と背筋力が初めて役に立った瞬間だ。

 

黒潮本流を航行中、大波を受けたのは良いが、船が180度回転してしまった。

船底がツンツルテンでキールもないから仕方ないが、悪いことに川上社長を乗せている時に今度はエンジンが漏電停止、「じいさん」は怒って担当重役を本社から呼び付けた。

 

続く

 


東シナ海流2 ヤマハが呼んでいる

http://ameblo.jp/muu8/entry-10092766394.html

東シナ海流5 火を噴く島

http://ameblo.jp/muu8/entry-10093560617.html