完全な海水塩作りの苦悩 1 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

マリンビレッジで完全なミネラルバランスの自家用塩を作り始めて10年近い。

あくまで自家用で、釣った魚の天ぷらや塩焼用だった。

その味に感激して持ち帰りたい人が多く、出来る範囲で分けてあげて来た。

海水を海から運び、特注の鉄製釜戸と大鍋で大量の薪を燃やして作っても1日に1キロ強が限界だ。これは40リットルの海水を蒸発させた量に当たる。

燃料は元からあった大量の廃材や製材所から無料でいただいた切りクズを使ってコストを抑えたが、製造頻度は少ないからそれで十分間に合った。

それでも仕上げの1時間は土鍋に移してガス台を使用、固まらないよう付きっきりでかき混ぜなければならない。

手間と経費から価格を出せば最低でも1キロ1万5千円、100g当たり1500円。

人を雇い事業として適正価格にするなら1キロ当たり2万円、100g2千円になってしまい世界一高価な塩になる。

手前都合だけで売るわけにもいかず、そんな塩を買う人もいないだろう。

これまでの価格は国内のブランド塩より安めに設定、100g当たり400円にしていた。

1日がかりでも4千円だから事業としては成り立たず、ヒマな時間に社員や野人が作っていた。

しかしここに来てあまりにも需要が多く、切実にこの塩を求める人にすら提供出来なくなった。

分けてあげたくても作る時間もなく、3倍のペースで作っても要望に追いつかないのだ。

それに本格的に製造するなら燃料も有料で確保しなければならなくなる。


続く・・