麦藁帽子は作れない | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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麦わらをもらってきた。野人農園に行く途中の麦畑でおじいさんが麦を収穫した残りのワラを束ねていた。麦わらが懐かしくてつい車を止めて眺めていたら欲しくなったのだ。別に何かに使おうとしたわけではなかった。そこでおじいさんに「ワラ欲しい・・ワラくれ~!」と言ったら・・・ワラわれた。おじいさんは畑の野菜の下敷きにするらしいが、こんなにたくさんは必要ない、まあもったいないから整理していたのだ。愛想良く「好きなだけ持ってけ~」と言うので、一掴みくらいいただいた。するとおじいさんは、「あんたそれじゃ麦藁帽子には足らん~もっと持ってけ」とどっさり・・。ま・・待て・・麦ワラ・・帽子~? 野人は帽子などかぶらんのだ。一日炎天下の海上でも髪だけで十分、それにあんなものをかぶれば風通しが悪くて蒸れてしまう。髪が最高の天然のラジエターだ。「違う~」とも言えず考えていたら、おじいさんは勝手に麦藁帽子を作るものと決め込んで大きな束にして結んでくれた。もう一つ作ろうとしたから「いや・・こんだけでいい」と言うと、「何じゃそんなもんでええんか?車にはまだ詰める」とおっしゃられる。野人車は掃除もした事なくて農業車みたいになっているが、ワラには埋もれたくない。それに何で麦藁帽子なんじゃ・・・・その時はじいさまの熱意に押されて「麦藁帽子」を作らなければ・・と使命感が湧いてきた。まあ何とかなるだろうと車から降ろして麦わらの束を見つめても、さっぱり作り方がわからないし、わかるはずがない。船乗りは長かったからロープワークはお手のもので結びから編み方まで得意だ。ワイヤーだって編みこめる。しかし麦わらは・・野人の指ではこんな細くて短いものは編めん・・・やはり麦藁帽子は作れない。

「おじいさんごめんなさ~~い、ストロー作るから・・・何本も・・・」