永久に柔らかい表土の仕組み | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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野人の自然循環実験農園は、最初に構造設計、多様な形態の大型うねを作ったら二度と耕さない。根菜など掘り起こせば結果的に耕すことにはなるが、小さなジャガイモなどは残してそのまま土を元に戻しておく。自然界の仕組みを物理的に理解し、活用すれば表土を永久に柔らかく保つ事が出来る。それはたいして難しくもなく、硬くするのも柔らかくするのも自在なのだ。酸性土壌、アルカリ性土壌と言う言葉もよく使われ人は石灰を使うが、そんなものは植物の仕事で気長に放っておけば自分達で環境は作る。野山を見渡せば理解出来るように、土壌のバランスがよければ保水性があるから水やりも必要ない。肥料も、一般の畑ほど肥沃にする気はないが、鳥や虫や微生物が大量に集まるようにすれば適度な養分が入り何もしなくて済む。野菜を必要以上に膨らませて立派にする事も考えていない。健康な植物としての本質を持った野菜であれば良い。見に来た人は小さな野菜にはがっかりするだろうが、土壌の柔らかさにはみな驚愕する。別に微生物を買ってきて特別な事をしているわけではない。自然から学んだことを実践しているだけだ。ほんの少しの労力で簡単に柔らかくなる。人がいくら耕しても重力には勝てず、雨が大量に降れば土は固まる。それが自然の理。だから農家は年中耕運機を動かし、それが当たり前の常識になっている。しかし自然界にはない不自然な土なことには違いない。だから堆肥も肥料も必要とする。土は有機物で作られるから必ず少しづつ蒸発、野菜も雑草も植物、毎年取り続ければ必ず土壌は減ることになる。機械化された広大な農地で大量収穫をするならそれもやむを得ない。食料としての野菜は必要だからだ。

野菜山菜の多年草は放っておけば毎年楽に収穫出来るが、ヨモギやセイタカアワダチソウなどの根を張る多年草は抜いておけば年々数が減少し、人が耕すよりも1年草が耕したほうがはるかに正常で柔らかい土が出来上がる。その構造は重力や雨で潰れず、感心するくらい物理的構造になっている。「崩れず中が柔らかい」おにぎりの構造に似ている。この自然界の単純な仕組みを利用すれば生涯耕す必要はなくなる。つまり、草を知り、草を活かした土壌保全法とも言える。

残った草は1年草だからその根は枯れて微生物が分解、土中に空洞を作る。レンゲやカラスのエンドウなどの豆科は初夏までには根も完全に枯れる。縦穴が無数に空いた練炭を思い浮かべると良い。通気性が良くて強度を保っている。小鉢に土を軽く入れてひっくり返した土山と、小鉢に入れた土の上から「ケンザン」突き刺し、ひっくり返した土山の強度を比較すれば想像がつくだろう。一年草の根は土を縦横にまんべんなく押し退け、枯れて空洞を作る。だから土壌は強靭で通気性があり、根を分解する微生物の住みかとなり、保水力も良くなる。「柔らかさ、強度、通気性、保水性、施肥、微生物」と、一石六鳥になるのだ。表土だけでなく好気性微生物が土中で活動出来るから冬は手を突っ込むと温かい。決してフワフワではなく、手が「ボコ!」と入る。うねの表土は刈った草を置くほど柔らかく、土をむき出しにするほど硬くなるが、育つ野菜によって色んな実験をしている。種や苗の時期が異なるからだ。野菜同士、草や山菜、樹木との相性も各所でやっているので、何をやっていたか忘れてしまう事もある。夏草が勢いを増すと、面倒だから取り残した野菜ごと草刈り機で刈ってしまい土に戻す。元気があれば野菜もまた生えてくるだろう。