大怪我でも縫ったことがない野人 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

野人はまだ一度も傷口を縫った事がない。

傷を負わなかったのではなく縫わなかったのだ。

あのムカデのような補修跡は好きにはなれない。

野人が子供の頃から負った傷は半端ではない。

男の子は誰もが子供の頃に傷を負うが、都会の子よりも田舎の子の方が圧倒的に多い。

安全に管理された公園ではなく海や山や川で遊べばどうしてもそうなるのだ。

楽しく遊べて学ぶ事も多いがリスクも大きい。


海や野山は危険も溢れている。

切り傷、擦り傷、刺し傷だけでなく、毒虫刺され、動物による噛み傷も多い。

特に小学校の頃は傷が絶えたことがなく必ずどこかに瘡蓋があった。

中学に入り丸坊主になると、海や山の子はほぼ全員やたらハゲが目立った。

傷跡が一目でわかるのだが野人の頭は無傷だった。

体は傷だらけでも頭部はチャッカリとガードしている。


中高は冬以外は裸で海に潜っていたので切り傷の他、クラゲやウミシダにも毎回やられていた。

薬を塗る事も包帯する事もなくいつも放置していたら治るのだ。

海では血が止まらないような深手を負うことが多かった。


錆びた太い船釘を踏み抜いた時は悲鳴をあげた。

歩けずに血が止まらなくて困ったこともあったが、釘を引き抜いたら特に手当てもせず、血が止まれば再び海に潜った。

かかとにウニのトゲが数本刺さって折れて取れなくなった時は、ナイフでかかとを切り裂いて取り出した。

痛くて死にそうだったが海水で洗えばやがて治るのだ。

カキや岩で太股を大きく切り裂いても傷はすぐに塞がる。


誤ってナイフやモリで自らを傷つけることも多かった。

船乗りになってから、グラインダーで人差し指の肉をえぐったことがあり大量出血、関節の骨まで露出、舐めて放置していたら治ったが傷跡は残っている。


つまり、怪我で医者にかかったことは一度もないのだ。

子供の頃からどうすれば治るか本能で察知していた。

足の人差し指の骨折も気付かず、自然治癒したが曲がってくっついてしまった。

知っていれば割り箸で真っ直ぐくっつけたのだが、医者に言われて骨折に気付いたのは20年以上経ってからで手遅れだった、痛いのを我慢して下駄で歩いていたし。

やはり骨折は外科に行ったほうが良い、曲がるぞ・・


よく動かす場所で傷口が開く可能性があれば別だが、そうでなければ切り傷は放置するのが一番だ。
間違っても消毒液やヨーチンなどの化学物質は使用不可、治りが遅れることは間違いない。

包帯やバンドエイドも治癒を妨げる。

やむをえない場合以外はやらないほうが良い。


石鹸を使った皮膚は脂質と微生物が足りず治癒が遅くなる。

傷口が化膿するのはオキシフル、ヨーチン、絆創膏、包帯・・と相場が決まっている。

皮膚の機能が正常なら滅多に化膿などはしない。

微生物が細菌の侵入を防ぎ、酵素が傷口を修復する。

傷口を動物のように舐めればもっと治りが早い。