気の科学31 生命力のないレタス苗の末路 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは


久しぶりにレタスの苗を買った。レタス類は種を蒔けば通路でも何処にでも生えてくる。夏が多忙すぎて農園の管理が出来ず、種を蒔くのが遅すぎた。まだ新芽が出たばかりで食えそうもない。花が咲いて飛んだ種もまだ発芽していない。早くレタスが食べたいので苗を10株買って来てこの事務所の前に植えたのだが、1週間もしないうちに消滅寸前だ。見るからにひ弱そうな苗で、触れだけでパリっと破れるのだ。買う時にレジのお姉さんが何とか言う薬をかけて下さいと妙なことを言う。無農薬無肥料栽培だと言うと「失礼しました」と頭を下げた。その理由がこれだったのだ。おそらくクレームが多かったのだろう。

虫に食われたレタスを見たのはこれが初めてだ。以前にも書いたが、レタスはキク科で絶対に虫は食わないし肥料もいらない。ヨモギと同じなのだ。肥料を与えたレタスが食われるのは聞いていたが、こうして目の当たりにすると「ハ~?」と驚愕してしまう。売るほうとしては苗の形を成していれば良いのだから化学肥料で短期に作った苗だ。苗がひ弱な事は誰もが気付いていることだろう。薬で虫を抑えて早く肥料で太らせるのが今の野菜なのだ。スーパーで買うレタスもこれと同じ葉質をしていてすぐに破れる。そもそもレタスの葉は簡単に破れるはずがない。3株は今のところ頑張っている。少し大きくなり、葉の色も勢いも少し変わってきた。自力で気を吸収しているようだ。庭は二年間耕してはいない。毎年レタスやほうれん草が大量に群生するが、虫に食べられるどころか穴も空いた事がないのだ。種から発芽した時から自力で環境を整え養分を確保している。薬など使ったことがないから虫はウジャウジャ混生しているし鳥も来る。ヒヨドリに食われるのは何故かブロッコリーの葉ばかりだ。キャベツも白菜も、トマトも連作で十分出来るのだ。青虫など一匹も殺さずキャベツは収穫出来た。ゴーヤはまだ頑張っているし、ニラもネギもシソもシマラッキョウもまだある。そんな中でこのレタスのひ弱な苗だけが「異物」だったようだ。異物は自然界から真っ先に排除される。しかし、チンゲンサイならともかく、虫も食わないレタスが食われるとは妙な話だ。生命力、つまり「気」が正常でなければ構成物質も正常ではなく、レタスの本質が薄れてしまっているのだ。今のスーパーで売られる野菜がそうであるようにまともな養分もないのだろう。

実験のつもりでレタスの苗を買ったわけではない。苗が弱いのは知っていたが、10日もすれば大地の気を吸って生命力を持ち、わずかな養分で成長は遅くとも正常なレタスに育つだろうと思っていたのだ。現に何株かはそうなりつつある。しかしこれほどひどいとは思わなかった。苗はレタスとは程遠いものだった。時間はかかっても種から土質を記憶させたほうが良い。水と養分で過保護に膨れた子野菜をいきなり自然界に放り出すようなものなのだ。そうなれば最後まで人が面倒を見なければならない。有機肥料を使えば食べやすくて美味しく育つかもしれないが、虫が群がる事は「異常」の証明だ。そんな「気」のない不健康な野菜は野人は御免被りたい。