アルキメデスの原理と言う言葉は誰もが聞いたことがあるはずだ。よく流氷が例に挙げられるが、「水中の物体は、その物体が押しのけた水の重量だけ軽くなる」と言うもので、浮力の程度を示している。平たく言うなら水を基準に、水よりも重たければ沈み、軽ければ浮くと言う事だ。それを比重と言う言葉で表している。水1リットルは1kg、1立方センチは1グラムだ。比較すればアルミは水の2、7倍の重さ、鉄は7,9倍、金は19倍、その辺の石ころは3倍くらいだと考えればよい。同じ容積で比較しているからそれらの浮力は1になる。石や金属の数値から浮力の1を引いても重量のほうが大きいから完全に沈んでしまうのだ。水と同じ1であれば釣りあい、1よりも軽ければ水に浮く。同じ容積で比較するとガソリンは0,75、重油は0,9くらいだからその分だけ水に浮いている。水や海水が凍れば体積は膨らむ。その膨らんだ部分だけが浮力となり浮いて水から出ているのだ。人の骨は比重2で、血液と筋肉はやや水より重く、脂肪はやや軽い。人の比重はほぼ水と同じだと考えれば良いが骨格や脂肪などの体質により、0、08以内の差は出る。海水の比重は1、03で真水よりも重いからその分だけ人は浮きやすくなる。
水に浮くには肺をうまく利用すれば良いのだ。肺活量の男女の平均は3000ccだ。人は普通の呼吸で500cc、ペットボトル1本分、運動時ではフルに肺を使う。普通に呼吸すれば必ず体の一部が浮くようになっている。息を全て吐き出せば沈む。つまり溺れて肺が水で満たされれば沈む事になる。心臓麻痺などで肺に水が入らなければ必ず浮く。
楽に呼吸しながら水に浮くには背面泳ぎが一番。浮く部分に口を持って来れば良い。手足をヒラヒラさせているだけで普通に呼吸出来る。大きく吸い込んで息を止めたりせずにもっと楽に呼吸しながら泳げる方法はある。一呼吸の500ccを1000ccにして吸い込み、吸っている時間を長く、吐く時間を短くすれば良い。つまり、吸う~~ハ!、吸う~~ハ!の要領だ。これで浮力がまったく変わって来る。クロールや平泳ぎなら、吸って水の中で少し息を止めて、顔を上げて呼吸する寸前に水の中で吐き出し、その肺の反動で顔を上げて息を吸う。魚の浮き袋と同じように肺の中の空気を調整すれば良いのだ。
カナヅチは最初から水に沈むと思い込んでいる。この比重、浮力の簡単な原理を理解させ、親か誰かが最初は水中で頭を支えて仰向け、大の字になって浮いて呼吸する事から教えれば、誰でも泳げるようになる。これを小さい頃に仕込めばよい。後は放っておいても自分で泳ぎを覚える。スイミングクラブなどに通う必要はないのだ。
コツはアゴを引かないことだ。アゴを上げて脳天を水に突っ込むようにすれば楽に呼吸が出来る。アゴを引いて頭を立てるようにすれば口は沈んでしまう。通常の泳ぎでも同じ事が言える。息を吸おうと頭を立てるほど、背伸びをするほど「下半身」が沈んで水の抵抗になりスピードが落ちるからさらに体が沈み、やがて失速して体が完全に立ってしまいプールの床に立つ事になる。そして、ゼイゼイ言いながら「呼吸が難しい」とボヤクことになる。チョイチョイと手を入れれば、25mやっと泳げる人間もわずか半日で、本人も信じられないくらいの50mのスピード泳者に育てる事は難しくない。野人が水泳教室を開くなら全員一日で卒業だ。「面倒だからあとは自分でやれ・・」と言うだろう。その方法で40過ぎのカナヅチの社員を1時間ちょっとで25m完泳させた。そして同じことを言った。性格も面倒見も・・あまり良くないのだ。