ヘルストレーナーが気づいた健康の本質 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

ヤマハのリゾート施設でフィールドとマリンの支配人をしていた頃、健康保険組合主催で中高年の団体がよく来ていた。広大な大自然には農園や果樹園、数十キロにわたる遊歩道もあり、スタッフと共に自ら草刈機も使い管理をしていた。水生動植物の沢、ビオトープ、アケビの道やヤブツバキ、ハマボウの群落など、多様なゾーンも作った。小川にはドジョウや天然うなぎ、ザリガニ、モエビなどが群れ、野生の鴨もヒシの実を食べに来ていた。団体には専門の指導員がついて、主に万歩計を持ってウォーキング中心の催し物だった。その度、山野草のガイドに借り出され、遊歩道の途中で色んなものを採取しながら話をしていた。トレーナーは数人いて、ウォーキング、体操など専門分野が分かれていた。やがてヤマハを退職、会社を興して海の施設の運営を始めた頃、居場所を聞いて、当時の女性リーダーが訪ねて来た。これまで自信を持ってやってきた自分の仕事に疑問を感じたと言う。彼女は既に自立して、東京を拠点に全国を講演や講師で回っていた。自分のやってきた専門知識は、人の健康を全体から考えるとほんの一部であり、本質的なものが欠けているし、自然の事や食べものについても何一つ知らないと思うようになったと言う。どうやったら知ることが出来るかと考えていたら野人に行き着いたらしい。それから、こちら方面の仕事がある時には必ず寄って講習を受ける事になり、月に一度くらい通ってきた。

山の植物、浜の植物、魚介に動物、山菜に木の実に薬草、色んなことも自然界の仕組みも教えた。人を始めとする生き物は本来どのようなものかも彼女は理解し、考え方が180度変わったと言う。彼女は食材や薬草だけでなく、つるや流木や浜の石や貝などのアート素材にも強い関心を持った。自然の造形美にはまってしまったのだ。食材の味だけでなく、その発見や感動が心にどのような影響を及ぼすかも理解したようだ。健康とは体操やジョギングだけではなく、食の本質、心の在り方、美を追求する感性のアートも必要だと確信していた。2年で卒業し、彼女が発行したテキストは斬新的で反響が大きかった。それまではウォーキングの専門的なことばかりだったが、新たなテキストのタイトルは「道草ウォーキング」で、色んな野草に触れ合いながら楽しく歩く内容だった。ただひたすら歩く事が目的ではなく、自然散策すれば知らないうちに歩いてしまうのだ。歩くのは手段に過ぎない。野人も、必要だから手段として歩くのであって、健康の為に黙々と歩いたり走ったりするのはまっぴらごめんだ。心が豊かで、食が豊かであれば普通で良いのだ。改めてすることなどはない。結果的に運動する事にはなるが、運動しようと思ってすることほどつまらないものはない。今では彼女は「個人事業」を株式会社にして、美味しい健康食材、専門の美容、アートまで癒し空間に取り入れ、女性スタッフと共に全国を股にかけてバリバリ働いている。野人もその目の輝きには圧倒されてしまう。彼女いわく、足元の視点に気づき、本質を理解して視野が広がると、悩みがなくなり、妙な気負いも全くなくなったらしい。もはや後光がさして・・ぐうたらな野人には近寄りがたい。