スイミン愚物語 ウォーたあボーイズ2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

8月に入ってから司会者が打ち合わせをしたいと言ってきたのだが、3部のタイトル以外、具体的な事は何も決めていなかった。司会進行上それでは困るようだ。ウォーターボーイズ達も不安で仕方ないらしい。1部の珍泳教室だけでも一回やって、二回目は司会者も入れてリハーサルをやることにした。2部、3部については実際にやらなくても、現場で段取りと進行の打ち合わせをやれば済む。さっそくウォーターボーイズが意気揚々とプールに集結した。と言っても営業後だから自分を入れて7人しかいない。その内3人は見学だ。

オープニングは講師として待ち構える野人の元まで、生徒3人がアナウンサーに紹介される度に、一人づつ飛び板飛び込みでコミカルに飛び込んで泳いで集合整列、点呼をとる。そしてまず「珍泳」の最初は「イカ泳ぎ」で仰向けになって手足をイカみたいにシュー!っとやって進む泳ぎだ。ポイントは大きくひとかきする度に「イカ~!!」と空に向かって叫ぶ。そのうち一人が「タコー!」と叫んで野人にボッコリと沈められる筋書きだ。二番目は「タコ泳ぎ」だ。まず野人がやってみせるが、どうと言う事はない、スローのクロールで手を水から上げて入水するまでに「手首をタコの足」みたいにスルリと一回転させる人をおちょくった泳ぎだ。3番目はちょっと難しい「馬泳ぎ」だ。一見「犬掻き」なのだが体は伸びていない。犬や馬みたいに足は下に向く。背筋を反らせて頭とお尻だけが常に水上に出る「馬かき」なのだ。イカ、タコ、ウマの次は「スイカ泳ぎ」。これは一見スローモーな平泳ぎだが一かきした後がちょっと違う。他の部分は沈んだままお尻だけをスイカみたいにボッカリと浮かせるのだ。そして顔を上げたら「スイカ~!」と叫ぶ。そこまでやったらボーイズが訴えた。「船長・・ボクらこんな恥ずかしいことやるんですか?」とほざく。お嬢さんも多いし、もっと格好良いこともやりたいらしい。「アホ・・一夜漬けで人に見せるような格好良い技が出来るかい!特上牛肉・・いらんのか?」と言うと、「やりま~す!」と返事はあっぱれだ。ウォーターボーイズの見せ場は「シンクロUFO」だ。足を真っ直ぐ伸ばして揃え、仰向けに浮かび、手だけをヒラヒラさせて前後左右に自在に動き、その場で一回転もやる泳ぎで、よくシンクロで見かけるスタイルだ。講師の「ウェーブ光線!」の合図で手首を返して「ビシュ!」と波を立てて水を飛ばし、「すねーく波動砲!」の号令でスネ毛だらけの見苦しい片足でビュ!っと空を蹴り真っ直ぐ立てるがこれがなかなか難しいのだ。足の太さも異なり、不ぞろいのすね毛でちっとも美しくはない。

最後の二つ、「究極の犬掻き」と野人のスペシャル泳法「ハイスピード忍者泳ぎ」は本番まで未公開にして、ひたすら、すねーく波動砲の練習に徹した。足を上げる度に奴らはブクブク沈むのだ。「それでもウォーターボーイズか!海で鍛えたマリンスタッフだろうが! 牛肉・・食えんぞ」と激を飛ばした。野人は練習しない。そもそも練習と名の付くものは大嫌いなのだ。ただ、人にやらせるのは・・苦にならない。次に嫌いなのが、予習に復習だった。