大地の仕組み 土の誕生 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

 

最初の陸上植物は藻類と植物に寄生する地衣類だった。

地衣類はコケやキノコとも違い、菌類の仲間で藻類との「共存体」だった。

地衣類はべっとりと大地にくっついて固定していった。

原始的なトクサやシダなどの根が岩石の隙間に根を張り、植物と岩石による長い土創りが始まった。

 

まず草食小動物がこれらの植物を食べに上陸、こうして4億年前に最初の土らしきものが地上に出来た。

最初に有機物を作り、酸素を作り、地上に生き物が住めるようにした「らん藻」は土壌微生物としても存在、炭素や窒素を固定する独立した栄養生物だ。

石油や天然ガスも1億数千年前に微細藻類が作った炭水化物の産物、人類はこれらを掘り出し藻類のおこぼれにあずかっている。

 

また昔から北欧諸国、フランス、イギリスでは海のミネラルやビタミン、多種微量元素が含まれる藻類を大量に肥料として利用していた。

古生代末期。環境の乾燥化につれて、ソテツやイチョウなどの裸子植物がシダ植物に取って代わり、中生代末には被子植物が裸子植物に取って代わった。

風で花粉を媒介する裸子植物に対して、被子植物は昆虫や鳥類の手助けで種子を広範囲に渡って広め、色んな形で環境に順応、進化していった。

 

植物は大気と水から有機物を作っては地上に戻し、土壌を豊かにし、虫や鳥や動物に住処と食料を与え、それらを介して繁殖、また彼らからリン酸を始めとする不足養分を還元してもらう。

地上に戻した有機物や動物の糞や死骸は微生物が分解、無機質にして植物の根に与え、またその微生物も生を終えると養分として土に戻る。

 

草は土中に根を張り、枯れると微生物が分解、その隙間が通気性を良くし、養分も土中に蓄える。ミミズや色んな虫が土に潜り込み、さらに土壌を豊かにする。

植物は陸に上がった藻類、海の中では固定以外に役割のなかった「根」を進化させ、元は海だった大地から養分を吸収、豊かな土壌を創りあげた。

 

藻類と同じように、地上の環境を整えたのは草であり、樹木なのだ。

だからこそ動物も繁栄出来た。

そしてその動物とも共生してさらに進化の道をたどり大地を豊かにしていった。

 

やがて土は保水力を高め、乾季にも負けないような土壌環境が出来上がった。

通年湧き出る水は大地を潤し、川に水をたたえて流れ続けるようになった。

そしてさらに様々な生き物が川を上り、自然循環の形で土作りに参加、現在の「土」が出来上がった。

 

気が遠くなるような年月を経て多くの生き物が創りあげた「土」を破壊する事ほど愚かなことはない。

条件が揃った今は、最初に耕して畑を作っても、雨さえあれば3年程で周囲の彼等が健康な土壌を創りあげてくれる。

人間は地上の動物としての役割を果たし、彼らと「共生」しているのだろうか。

本質を見ない独自のエゴで搾取と破壊を繰り返している。

 

科学は発展途上どころか、有機においてはいまだ藻類のワカメにも及ばず、虫一匹、葉っぱ一枚にも及ばない。

生命を生み出す土をコントロールすることなど出来るはずもない。
土とは、海そのものなのだ。海を知らずして土の理解は出来ない。

 

地球が、そこに生きる生き物に提供した仕組みを壊さずに介入して、目的を果たすのが本当の意味での「人知」ではないだろうか。

そうすればいつまでも難儀な副産物に振り回される事もない。

 

土があったから植物が出来たのではなく、土は植物と動物が生きて行く為に一丸となって創りあげたものなのだ。

その、草と虫と鳥を排除した土で、人は何を作ろうとしているのだろう、食品には違いないのだろうが。