植物探訪1 ユーレイタケ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

今日は植物学者と二人で幻の植物を求めて山に登った。ネットで調べても数件の画像しかない神秘的な植物だ。それはタイトルのユウレイタケではない。

いつものように手ぶらで出かけた。麓に車を止めて先生は待っていた。まずは作戦会議だ。専門家用の分厚い図鑑を取り出しターゲットを説明された。先生が撮影した写真らしい。その植物があるところはもっと深い山で、その場所一箇所しか知らないとのことだった。この山には必ずあると言うのだが、捜索は苦労しそうだ。

先生は還暦を越えた女性で小柄だが、それにしては重たそうなリュックを持っていた。まさかとは思ったがニコリと笑う。やはり持たせられたが、一体何が入っているのか異様に重い。ジメジメした暗い山はキツかった。久しぶりで汗だくになりながら登ったが先生は手ぶらで楽そうだった。喋り捲るのだが野人は息も絶え絶えだったのだ。足元も滑りやすい。たとえ見つけて撮影に成功しても今回は名前も画像も公開出来ない。新聞社の依頼らしく、公表するまでネットでの公開は待って欲しいと言う。

急斜面に二人で「毛ジラミ」みたいに張り付いて、光も当たらないような暗い山を探索した。最初に見つけたのがこの「幽霊茸」でキノコではなく植物だ。マニアにはそれほど珍しい植物でもないらしいが普通の人が見ればびっくりする。暗い林に幽霊みたいに白く透き通った異様な姿が浮かび上がることからこの名が付いた。学名は「ギンリョウソウ」で「銀竜草」とも書く。湿気のある林に生える腐生植物で、葉緑素を持たず、自ら養分を作ることが出来ないのだ。古くは腐葉土から養分を得ていると言われていたが、そんな器用なことは出来ない。ベニタケ属の菌類に寄生し、その菌が共生する樹木が光合成で作り出した有機物を「菌経由」で頂戴して生きているのだ。

英名は「Indian pipe」、「Waxflower」で、漢名は水晶蘭。このほうがピッタリのようだ。

高さ15cm程度で、小さなパイプの先に花を付け、マルハナバチなどが受粉する。

途中撮影した写真が多く、6回くらいに分けて植物探訪シリーズで紹介する。