屋久島を拠点に20トンのクルーザーで秘境への遠征ばかりだったが、屋久島も捨てたものではない。目がテンになるようなことが3度あった。最初は宮之浦のフェリー乗り場の防波堤だ。釣りキチがいつも目の前で「バショウカジキ」がジャンプするのを見て、釣り上げてやろうと、来る日も来る日も沖に向かってムロアジ一匹掛けの「浮き釣り仕掛け」を投げ続けた。そしてついに24キロのカジキを釣り上げた。防波堤から浮きでカジキを釣ったという話が屋久島中に広まった。釣具屋さんの魚拓には、釣り場所、宮之浦防波堤と明記されていた。防波堤でそんなものが釣れるのは屋久島くらいだろう。
2度目は永田灯台のカンパチだ。同じ永田に住む友人の息子が3人で灯台の横の崖を下り、磯の大物を狙った。「想像を超えた大物」がかかり3人がかりで奮戦した。それでも釣竿がのされて立たない。数時間かけて磯まで引き寄せたら見たこともないような「巨大カンパチ」だった。とてもじゃないがフックなどでは無理で、二人が海に飛び込んだ。つまり引き上げるのではなく「押し上げた」のだ。そんな巨大魚を担いで崖は上れないから、3等分して内臓は捨てて各自が背負い崖を上って帰って来た。計量してみると、百キロを越えていた。しかも内臓がないぞう・・・。だからそれ以上は計測不能だったのだ。いまだにそんなカンパチは見たことがない。船からでも苦労するカンパチを磯から、しかも百キロを超える大物、釣りをやる人ならこれがどういうことなのかわかるはずだ。磯からは百キロはおろか50キロでも不可能に近い。日本記録など軽くぶっちぎっている。未公認だが。
3度目は釣りではないが、友人が水中銃を貸してくれと言って来た。クエを突いたのだが、銃を2本打ち込んでも穴から出てこないと言う。場所を聞くと、屋久島周遊導路の車からすぐに見えるところで、岸から50m、水深7mくらいの岩場だった。やっとの思いで引きずり出したクエは55キロの大物だった。中学生でも自転車で行って簡単に潜れる安全な海なのだ。カジキ、カンパチ、そしてこのクエ、秘境ならともかく、飛行場もある人口二万人の島にしては画期的だ。魚が減ったとはいえやはり屋久島は黒潮本流に浮かぶ「洋上アルプス」なのだ。