猿酒伝説 サルナシ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

猿酒とは猿が木の実を噛み砕き、木の窪みに吐き出して貯蔵していたら醗酵して酒になり、それを飲んで酔っ払ったと言われるものだが、やや怪しい。それはともかく、その木の実が「サルナシ」だ。サルナシはナシの仲間ではなく、マタタビ科のつる性植物で、キウイもマタタビ科、つまりキウイの原種はサルナシだ。サルナシは日本全土に分布、北海道では「コクワ」とも呼ばれている。日本の南の方やアジアに分布する「シマサルナシ」はキウイそっくりでキウイの半分弱の大きさだ。このシマサルナシがニュージーランドに持ち込まれ、改良されてキウイになった。キウイの原産地はアジア、日本なのだ。日本人が開発したフルーツは「柿」くらいしかない。野菜も同じで、何もしなくても食べていける程、日本は世界でも有数の食べものに恵まれている国なのだ。サルナシも、シマサルナシも輪切りにするとキウイそのもので、熟すと濃厚な甘酸っぱさがあり非常に美味しい。酒にしても琥珀色の素晴らしい酒が出来るくらいで、木の実愛好家には「国内最高の木の実」と評価されるほどだ。野人もキウイは嫌いで全く食べないが、サルナシは大好物。それくらいキウイに比べて濃厚な旨さがある。硬いうちは酸っぱく、しおれてぶよぶよに崩れ始めたくらいが食べ時だ。柿の熟しと同じだと思えば良い。猫がたまにキウイの木に体をこすりつけるのは、キウイがマタタビ科でマタタビの成分が微量に含まれているからだ。サルナシでも同じ事が言える。昔からサルナシ園を作ったりしてサルナシにはなかなかうるさい。ピラミッド農園のフェンスにも、ぶどう類やアケビだけでなく、サルナシやマタタビも植えている。山に行くと結構見かけるものだが、見分け方はそう難しくない。ツルが繁り、葉の根元の軸が赤いのが目印だ。葉はキウイみたいに大きくはなく、普通で黄緑色したツルツルの葉だ。これから6月にかけて白い小さな花をつけ、10月には実が熟す。キウイと同じで雌雄異株だからオス株には結実しない。メス株を育て、一部の枝に雄木を接木しても良い。かなり前の話だが、放棄したキウイの大株数本を根元から切って、出てきた枝にサルナシを接木したことがある。成長が早く、サルナシが鈴なりになった。今でもつる性植物の中ではマタタビと並んで一番好きな植物だ。