烏賊の食べ方 旨イカ? | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

海老、蟹、烏賊(イカ)は、代表的な日本人の好む食べ物だ。日本が世界を食べ尽くすとまで言われ、輸入量は世界一だろう。しかし、美味しい蟹を食べに旅行するとは聞くが、イカを食べにとはあまり聞かない。イカは比較的日常の食卓に取り入れられているからだ。甘海老、伊勢海老は産地まで行く傾向はあるが、イカは普段の食生活で納得していると言う事だろう。それぞれの美味しさは比較すべきものでもないが、この中ではイカが一番好きだ。多くの新鮮な魚介、旬を味わい、あえて軍配を上げるなら、海老、蟹の他、アワビを加えたとしても4種の中ではイカを選ぶ。釣りたての活きたイカのねっとりと甘い食感は他を圧倒する。甘さだけなら海老も引けをとらないが。イカを求めて海に出る事が一番多い。一般的に、イカのイメージはイカ刺し、天ぷら、寿司、姿焼きで定着しているが、イカの本当のおいしさは活きている時にある。タコが赤いと思っている人が多い様に、イカが白いと思っている人がほとんどだろう。茹でればタコもイカもカニもエビも表面は赤くなる。身は全て白いが、活きている内はその全てが半透明だ。イカを活かすのは難しくて魚屋や料理屋ではなかなかお目にかかれないからどうしても接する機会が少ない。

よく捕れるイカでは、スルメ、ヤリイカがあり、水深200m前後の深場で日中釣り揚げるが、夜も灯かりで浮かせて釣る。ヤリイカは比較的高価だが、スルメイカは大量に捕獲される為に値段も安い。釣りたては最高だが時間が経つとすぐに甘味も薄れてしまう。一般的にはよく使われるイカだ。沿岸の代表はアオリイカとスミイカがあり、スミイカは他のイカと違い分厚い甲があり紋甲イカとも呼ばれている。これらは肉厚で甘みが強く、量も限られる事から値段も高い。売られている分厚いイカはアフリカ産が多い。他にモンゴイカの仲間で大きくなるカミナリイカ、柔らかくて甘い剣先イカがあり、カミナリイカは通称コウイカ、剣先は地域によってはアカイカと呼ばれている。それぞれに味の違いはあるが、細胞が活きているものは全て美味しく、もちろん焼いても天ぷらにしても死んだものと比べてずば抜けている。生死でこれほど味に違いの出る魚介も珍しい。肝と和えても臭みもなくコクがあって旨い。中でも一番高価とされるアオリイカやアカイカ、スミイカは沿岸や内湾でよく釣れる。アオリイカは、統計でもこれからやってみたい釣りのトップに上げられている。ルアーマンの多くはゲームとしてフィッシングを楽しむが、アオリイカだけはバスと違いその味覚目的が強いようだ。活きたイカが手に入る釣り人の特権だ。それ程難しいものでもなく、食わんが為のルアーフィッシングNO1とも言える。魚も、その本当の味を知っている人は数少ないが、イカは比べ物にならない程少ない。魚介類の中での利用量と認識の差はまぎれもなく横綱だ。流通の問題と言ってしまえばそれまでだが好奇心の強い人は確かめてみると良い。個人的な嗜好を言うなら、活きたイカの刺身はみな旨いが、死んでも鮮度が良ければ、一番はケンサキイカで、握り寿司や刺身は抜群、食感も味覚も王様だ。アオリイカも抜群に旨いがやや硬い。天ぷらなら二番手を大きく離してダントツでアオリイカ。食べれば「イカ天」の認識が変わるはずだ。1週間以内で食べてしまう「自家製塩辛」なら、スルメイカに比べて肝は少ないがスミイカに勝るものはない。ゲソ焼きは柔らかいアカイカだ。イカは魚とは細胞が異なり、生きているうちに冷凍すれば家庭用冷凍庫でも甘味だけは落ちない。半透明のねっとり感の旨みはないが。イカに限らず海には未知の味覚が限りなく広がっている。