颯太は今年地元の高校を卒業した。
春からは、医療系の専門学校へ進学が決まっている。
特に、夢や志があるわけでもなく、
大学に行って勉強することに興味もなく、
就職する気にもなれなかったが、
教師に勧められて体験に行った専門学校の
在校生に親切にされて嬉しかったことが、
専門学校進学を決めるきっかけとなった。
ご両親は内心、大学進学を希望したが、
颯太が幼少の頃より、
自主性を尊重する教育をしてきたので、
進路についても颯太の意思に任せることにした。
卒業してからの颯太は、家にいることが多く、
いつも部屋で一人動画を見て過ごしていた。
いつものお気に入りのユーチューバーの動画を見ていた時、
その動画内で、
”なんのために働くのか”という書籍を紹介していた。
その中で、
「生きがいは天分をまっとうする中でしか得られない」
という言葉に、
今まで経験したことのない衝撃と震えが、
颯太の身に押し寄せてきた。
颯太は物心ついた時から、
なんで生まれてきたのだろう
なんで生きているんだろう
これからどうなっていくんだろう
と日々考えていたけど、
その答えは誰も教えてくれないし、
わからないままだった。
だからというわけじゃないが、
未来になんのために生きるのかの目的を持つことができず、
ただ、日々を過ごすだけの日常になっていた。
そんな変哲もない日常を過ごしていた颯太にとって、
「生きがいは天分をまっとうする中でしか得られない」
という言葉は、あまりにも衝撃で、
自分が生きがいを見出せずにいたこと
生きる目的を持っていなかったこと
を思い知らされたと同時に、
これで生きがいを見出せるかも？って
生まれて初めて、
未来に希望とワクワクする感情を同時に得られたのだった。
颯太は、感激のあまり、
両親に
自分が今まで生きる目的や生きがいがなく、
未来にも希望がなく、
毎日不安だったこと、
そしてそれが今日、一気に解決したことを、
両親も驚くほどの満面の笑みを浮かべながら話し続けた。
両親もそんな嬉しそうな颯太の顔を見るのは初めてで、
自然と涙が溢れてきた。
いつの間にか、
家族で肩を組みながら泣いていて、
他人が見たら驚く光景だと思うほど泣き、
そして笑い、最高の一夜を過ごした。
翌日から颯太は、
天分は自分に与えられているもの。
だから、元々備わっているものを伸ばして、
人のお役に立つことをまっとうすると決め、
それは、
昔から人を見たら親切にしたいと思う心。
親切な人を見ると尊敬する心、
それを活かせる道に進むことだと強く決意した。
元々、専門学校も親切な在校生に
心が動き決めていたことを思い出し、
専門学校で人に優しくお役に立てる、
ということを目的にして、学び、そして国家資格を得て人に親切にそして喜ばれる
看護師になることを目指すことを決意した。
いざ決意が決まると、春の入学が待ち遠しくて仕方がない、そんな
３月の某日だった。
将来、
白衣の天使の颯太くんが見れるのが楽しみですね。
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