僕はこうして… 51 side清音 | notes

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オリジナルのおはなしを書いています。



Kの会見会場に走っていた。


『しおんさん、早く!』

ピアノが呼ぶ声が痛かった。
何でオレが来るまで待ってくれなかったのか…。交通トラブルの重なりが運命のいたずらみたいで、本当に嫌だった。


「どいて下さい!」

会見場の真ん中でしゃがみこんだ圭が震えていた。
庇うようにレッドさんが抱き締めていて、リーダーとくまさんがその前で記者を押さえていた。容赦なく浴びせられるフラッシュに苛立ちが溢れそうになる。


『行け!』
背を押されて驚いた。

どうして…彼が?


「本当なんですか?」
「見てわからないのか!」
「じゃあ、なんでレッドさんは…」

騒ぎ立てる記者と圭を守る仲間達。
そこに、落ち着いたマイク越しの助けの声が加わった。


「それがすべて…運命です。」

ざわざわとした記者達が驚いて見た彼に任せて、オレとレッドさんで圭を抱えあげた。

とりあえず、ついたての奥、震えて耐える圭を抱きしめて、背を撫でた。

「大丈夫。大丈夫だよ。圭。」

声をかけて、自分が側にいることを知らせる。

目を閉じて逃げるように意識を遮断する前に、呼吸が乱れて過呼吸になる前に、認識して貰わないと…目覚めてからも発作が起きるかも知れない。
意識があるか、確認。
脈と呼吸も確認する。まだ少し乱れている。
側を離れるわけにはいかない。
圭に誰も触れさせる訳にはいかない。

そこで気づく。
圭の手をしっかりとつかんでいるレッドさんの手に…。

本当に…この手が発作を押さえたのか?




「どうして…あなたがここに?」

記者達は突然現れたスターに驚きつつ、フラッシュを浴びせている。


「Kは私がデビューする以前からの親友です。生まれも病気の事もLの事もすべて聞いていますので代わりにお答えします。 」

「Lさんは女性なのになぜ大丈夫なんですか?運命って、二人が特別な仲という事ですか?」

嫌な話の展開に耳を塞ぎたくなる。
騒ぎになる。
恐れていた事態になる…。


「先ほどご覧になったはずです。彼の発作は彼の意思ではどうにも出来ないんです。
それをどうしてLさんだけが大丈夫かなんて、誰がわかるって言うんですか?
二人の特別な絆、"運命"と言うしかないと思いませんか?」


「では、どうして女性がダメだと言わなかったんですか?」

「言ったらあなた方はこうして騒ぎ立てて、二人の仲を邪推する。
Lさんはレッドさんとして背負うものが多い方です。そんな彼女の立場を思えばこそ、このような事を避けるべく、Kは嘘をつくしかなかったんです。」


彼の言葉に記者達は黙った。
みんなが見ていたんだ。
発作が本当に起こる所を…。
Lさんだけが大丈夫な所も…。


「では、表に出てこなければ良かったのでは?」

残酷な一言だ。
病気なら何もするな…そう言いたいのか?


「その言い方は失礼だと思いませんか?」

彼の声色が変わった。
その低く力強い声に記者達は静かになった。


「確かにKは表に出なくても、世界中でコンサートを開催できる人気のある歌手です。
そのままでいることも出来ました。
けれど…夢みる事は許されるはずです。
KはLの歌声と才能に惹かれて、共に歌いたいと思った。その夢を叶えるために病気を恐れずに一歩踏み出した。
その決意のおかげで二人の作り出すハーモニーが聞けた。そのどこに問題がありますか?」


誰も何も言えなくなった会場。


圭の震えは止まっていた。
意識はないけれど、呼吸も脈も落ち着いていた。

『出よう。』

今しかないと抱き上げようとした。
意識が戻った時、発作が治まっているのか…わからない。
ここではないほうがいい。
オレが運ばないと…


「レッドさん…。手を…」

しっかりと手をつかんでいたレッドさんにそう声をかけて気づいた。
レッドさんが動揺して震えていた。

『上に部屋がとってある。とりあえず、そこに…』

そういってくまさんがそっとレッドさんの腕を引いてくれた。

「圭は大丈夫ですから…。
行きましょう、レッドさん。」

ハッと顔を上げて、頷いてくれた。



リーダーが上着を脱ぐと圭の顔を隠すように被せた。オレが抱き上げるとその上着が落ちそうになって、

「目覚めて真っ暗じゃ…怖がる。」

そんな事を呟いて、レッドさんがオレの横でその上着を持ってくれた。
圭だけじゃなく、オレの顔も隠すように…


「道を開けてください‼」

みんなに守られてついたてを出ると、一斉にフラッシュが浴びせられた。


「撮らないで下さい!
病人にカメラを向けるな‼」

Lになったレッドさんが大声で記者を睨み付けた。

「Lさん、一言お願いします!」

無神経な記者の言葉にレッドさんは圭とオレを守るように上着でしっかりおおうと


「運命なんて大層なものかわかりませんが、
男とか女とか…そんな事じゃなく、Kは自分にとって大事なパートナーで友人なんです。
これ以上、傷つけないで下さい。」


頭を下げると道が開いた。

レッドさんのその気迫とオーラに唖然とする記者達の間、オレはしっかりと圭を抱えて進んだ。


こうしてオレは…"運命"を感じていた。



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"運命"…ではないんですけど…。(((^_^;)