間違い探しのように、カウントダウンがゼロに近づくにつれて、一つずつ身に付けているものを取り払い、変えていくK。
始めは付け睫、次はメイクの一部、メイク、金髪のウィッグ、ドレスがシャツとスラックスになって…オレと対のスーツになって…
ゼロには並んで立つ。
同じアングルで撮られているけれど…少しずつ変わっていくその姿にネットは大騒ぎになった。
とくにドレスがパンツ姿になったときが凄かった。
「まさかの男⁉」
男女逆転の二人が男同士の親友として並んで、圭はシークレット歌手として活動していたKである事を語った。
自身の病の事も…。
「もし、これから僕にあっても触れないで下さい。それは僕の首を絞めるのと同じ行為だからです。
僕は決められた仲間以外に触れられると発作を起こします。
その事が原因でシークレット歌手として活動して来ました。
けれど、Lの曲を書いて、Lと出会って、Lの歌声を聞いて、歌手として共に歌いたいと思い、出てくることを選びました。
どうか皆さん。二人の歌声を聞きたいなら、僕に触れないで下さい。お願いします。」
上手く言えないけれど…そう言い告げた言葉と添えられた診断書と事務所の説明文。
そして、名だたる音楽家や有名人達から
Kを守って欲しいという呼び掛けに世間はその事実を受け入れたようだった。
そして、活動が始まった。
今回はコンサートだけでなく、TVにも出る。
毎回、緊張したがずっと側から離れずに何とか乗り切った。
そう安堵したラストの収録は生放送、
最後に出演者が手を振る時、隣の歌手がふざけてはしゃいだ弾みでKに触れた。
慌てて身を引いたKだけど…遅かった。
ちょうどカメラに抜かれていた。
一時間もしない内にKの病気は嘘だという書き込みが連なった。
幸い触れたのは男だったから、発作は起きなかった。
女性相手にだけという事じゃなく、すべての人を対象とした事が裏目に出た。
「会見する事にした。
レッド、付き合ってくれる?」
圭は動じずに告げた。
翌日の朝、会見は開かれた。
「病気は嘘なんですか?」
問われた圭はしっかりと話し始めた。
「私は弱い人間です。
信じて頂けるか不安で、嘘をつきました。」
「どういう事ですか?」
「認めるんですか?」
囲んでいた記者達が歩み寄ったのを見て、圭が震えだした。
「やめて下さい!下がって!」
オレはLとして、圭を庇った。
「僕の病気は本当です。
只、対象者が違うんです。
この事を知らせると誤解を生む可能性があって、どうしても言えませんでした。」
圭は震える手を自らギュッと握って、語りだした。
「私は幼い頃、日本に住んでいました。
でも、母は日本人ではありません。父は誰かもわかりません。
母はいつも働いていました。だから、私はひっそりと母の邪魔にならないように過ごしていました。
そのため、私は人の温もりとか愛情を知らずに育ちました。
やがて、母は男と一緒になるため、少年になった私を海外に出しました。
留学当時、音楽だけが私の救いだったので学べる事は嬉しかったです。言葉が通じなくても、いろいろあっても、音楽が出来れば良かった。
けれど、母達が事故で亡くなって、私は一文無しになりました。
そんな時、帰国も出来なかった私に手を差しのべてくれた女性がいました。
その人は私を助けてくれましたが、私が愛情も知らずに生きてきたせいで、その人を受け入れる事が出来ず、逆に傷付けあう事になって…
逃げ出した私は事故にあい、その時の恐怖から女性に対して、体が拒否反応を示すようになってしまったんです。
生きていくのに必死だっただけなのですが…自分でも気付かない内に、自分で自分の心を壊してしまったみたいです。」
聞くに絶えない。
悪いのは母や大人達だ!
圭を所有物にしたマダムだ!
なのに…。
「以上です。
Kが対人恐怖症なのは事実です。
只、女性に対してだけなんです。
彼のファンはほとんどが女性です。
応援してくれるファンが大切なのに恐怖しなければならない気持ちがわかりますか?
彼はずっと苦しんで来たんです。」
苛立ちがつい、出てしまいそうだった。
「僕は女性に触れると発作が起こる。
もし、疑うなら…試してみますか?」
驚いて振り返った時には、圭がいなかった。
手前にいた一人の女性に歩み寄って、手を差し出していた。
慌てて、手を引いて抱き止めたけど…遅かった。
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オイ!圭‼ !!(゜ロ゜ノ)ノ