今から40年以上前、初めてスペインの会社に正式に就職しましたその会社は音響関係の機器を製造する零細企業で従業員の数も10人ほどでした。

その当時のオーナーが住宅ビルの何室かを買いそこで営業を続けていました。

前にも話しましたがスペインのビルは基本的には一階は居住空間でないために店、工場など諸々が存在して生活、仕事、公共施設学校、病院など、農地、漁港などの特別な地域以外の全ての空間が同じところに存在するため通勤時間も短く効率的な生活空間です。

日本の場合は住宅街、商店街、ビジネス街、工場街など効率は良いのかもしれませんがそのため移動などの時間が長くなり、家族中心の社会なのか、仕事中心の社会なのかに分かれるところです。

またスペインの場合は90%以上が零細、中小企業なので同じ空間での共存が可能になります。

さてここからが本題のサンドイッチの話です。

スペインの場合の当時の工場勤務の労働時間は大きく二つに分かれ、8時間を半分に分け午前午後で半分ずつ、その間に昼食時間を2時間とり近場の労働者は自宅で食事をしてまた工場に来ると言うタイプと、まとめて8時間をぶっ通しですることにより帰宅時間を早くすると言うやり方に分かれていました。

私が勤務した会社は後者で、朝7時に始まり3時に終わりました。

そうなると8時間会社に拘束されますが10時になると30分のおやつの時間があります。

この30分の半分を会社が持ち残り15分は労働者で折半して実質の労働者の就業時間は一日7時間30分です。

この30分間が我々労働者に取り至福の時です。

朝7時に出勤すると言うことは6時以前に起床してコーヒーを飲むくらいで何も食べずに出勤する人が殆どです。

そうなるとこの10時のおやつの時間がその日における最重要な意味を持ち明日の10時のサンドイッチを何にするかという事を前日に考えます。

普通サンドイッチをイメージするときにはパンは柔らかい耳無しの食パンが日本では普通ですがスペインでは外側がカリカリした日本で言うところのフランスパンです。

全労働者の半分くらいは前の晩にサンドイッチを用意してアルミホイルに包んだ物を翌日持参しますが残り半分はパンにこだわりを持ちます。

そのグループに所属するのが私で中に詰めるものをアルミホイルに包み前日に用意しますが、パンは職場近くにある炭焼きのパン屋で作りたてを買い近くのバルでその詰め物を自分で詰めて食べました。

今は知りませんがバルでのショバ代は飲み物の注文だけでオーケーで詰め物によっつてはトマト、オリーブオイルをつけますがそれは別料金でした(オリーブオイルは無料)。

其れがその時の労働者たちの仕事時間内における一番楽しい時間でもありました。

そのあと会社を退社してから30年以上が経ちましたがあの時のサンドイッチの味は今でも脳裏に浮かびます。

最近日本に滞在していた間あのサンドイッチの感覚を忘れていましたが最近また懐かしくなりよく家で食べています。

その当時中に挟む具材の事を『テカ』と呼んでいましたが其れがスラングなのかは今でも分かりません。

其れで今思い出したのですが昔よく兄と近所の山に自然薯掘りに出かけましたがその時はいつもお袋が用意したおにぎりを山で食べましたが、今販売しているおにぎりは海苔が直接ご飯に接着していないので食べるときにパリパリして美味しく感じますがあの昔ながらの湿った海苔おにぎりもなかなか捨てたものではないと兄と話していましたが今回パリパリしたパンを食べながら前日の夜トルティージャとトマトを塗り込んだパンをアルミホイルで包んだものなどは翌日良い具合にその風味がパンに染み出し美味しく食べられた事を思い出しました。

湿り気を帯びおにぎりの海苔、食べるときにパリパリ感のあるおにぎり、具の染み込んだ柔らかいフランスパン、中が柔らかく外がパリパリのフランスパンどちらも甲乙つけ難いと思うこの頃です。

今日はスーパーでイベリコ豚の腸詰のスライスした物2種類を買ってきました。

子供達が家にいた頃は何種類かの腸詰がキッチンにぶら下がり生ハムは一本ごとハム台に乗せてありました。

ただ娘が豚の蹄を見るのががキモいと言うので人間用の靴下を履かせたところもっとキモいと言うことで其れ以降はスライスしたものを冷蔵庫で保存する様になりましたが今では腸詰なども殆ど食べないので小分けしてスライスしたものが便利です。

今日は超詰めを買いながら昔の勤務先で食べたサンドイッチを思い出したので書いてみました。