冷静に、しかしテロと戦う意思を強く持つ | 武藤貴也オフィシャルブログ「私には、守りたい日本がある。」Powered by Ameba

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国家主権、国家の尊厳と誇りを取り戻す挑戦!品格と優しさ、初志貫徹の気概を持って(滋賀四区衆議院議員武藤貴也のブログ)

「痛恨の極み」
 2人の邦人(後藤健二さん、湯川遥菜さん)がISIL(「イスラム国」と称するテロリスト集団)に殺害された事件について、まず故人に対しご冥福を祈るとともに、ご家族に心からのお悔やみを申し上げる。
 殺害された両名と同じ日本人として、テロリスト集団に対し強い憤りを覚えるとともに、テロリスト集団と戦う意思を国家として強く持たなければならないと実感している。


「自己責任と国家責任」
 一連の人質事件の中で、日本国内では「自己責任論」が叫ばれた。確かに外務省の渡航延期勧告や退避勧告を無視して入国したのであるから、あくまでも悪いのはテロリストだが、拘束された責任は本人にもある。まして湯川さんは武器商人としてシリアに入国、後藤さんはその湯川さんを救出するために入国したのであるから、ジャーナリストとして現地取材に行くなどという社会的な目的を持っていたわけでもない。つまり動機が不純だという批判も免れない。
 しかしながら、だからと言って国家は2人を救わなくても良いということにはならない。国家第一の責務は、何があっても国民の生命財産を守ることにあるからだ。


「テロの要求に屈してはならない」
 一方で、今回のように身代金や政治犯の釈放を要求してきた場合、「人命第一」を掲げてそれに応えるべきかどうかの答えは否である。日本政府は難しいことだが、テロリストの要求に応えずに人質を救出することに全力を挙げなければならない。それはテロリストの要求に応えれば、かえってテロを助長し、他の邦人も危険にさらすことになりかねないからだ。
 1977年のダッカハイジャック事件の際、当時の福田赳夫総理が「人命は地球よりも重い」として、出獄希望の6人の日本赤軍メンバーを釈放し、16億円のテロ資金を提供した。しかしそうした対応は国際的非難を浴びただけでなく、事実同年一ヶ月半後に横田めぐみさんが拉致され、それ以降数百人とも言われる日本人が拉致されるテロ事件を引き起こした可能性が指摘されている。日本は人質をとって脅せば要求に応えると思われたからかも知れないのだ。
 そういう意味において、テロの要求に屈しなかった今回の安倍総理の対応は正しかったし、「テロに対し強い憤りを覚える」と表明したことはテロに対する戦いの表明でもあり、評価されるべきだと私は思う。


「湯川遥菜さんのお父さんの思い」
 話は変わるが、湯川遥菜さんのお父さんが、息子が殺害されたと連絡が入った後、取材に応じて「ご迷惑をお掛けして申し訳なかった」と謝罪し、さらに政府などに対し「救出に向けて尽力して頂いた」として感謝の意を示したことが世界で注目を集めた。私としては、息子を失った深い悲しみがあるにもかかわらず冷静に謝罪したお父さんに、お悔やみを申し上げるとともに心からの敬意を抱いた。
 しかし海外、特に中国では「なぜ息子が殺されたのに謝罪し、感謝するのかわからない」という意見が多かったという。それどころか「自分の子どものことより、まず社会に謝罪するとは、日本の全体主義は恐ろしい」といった反応もあったようだ。「韓国人だったら人質の親は絶対にカメラに向かって大統領を罵るだろう」というコメントも紹介されていた。
 日本では個人よりも共同体を重視する。個人よりも家族や、地域、コミュニティ、国家などが優先するというのが日本の常識である。今回の湯川さんの一連の行動は、個人的なものであり、その個人の行動が日本全体を不安に陥れたため、父として謝罪するのは日本の社会常識に則った言動だった。湯川さんのお父さんが取材に応じた後、湯川さんに対し「自己責任」を求めるコメントは激減し、今度は同情論が広がったことなども、中国メディアは紹介していた。
 不謹慎かもしれないが、一連の日本世論の反応は日本の伝統的な精神や価値観を世界に強く示したのではないかと思う。


「重要なのは今後の対応」
 今回のテロ事件を受けて大切なのは、今後どのようにテロリストに向かっていくかということである。
 安倍総理は、17日エジプト・カイロで「『イスラム国』と戦う周辺各国に総額で2億ドル程度支援をお約束します」と、非軍事的分野に限定した人道支援を宣言した。しかし一方で、イスラエルの地元紙「イディオト・アハロノト」(19日付)に「真の友からの提案」と題し寄稿し、その中でイスラエルが推進するユダヤ人入植(住宅)地の建設について「国際社会が国際法違反とみなす」ものだとして、改めて見直しを求めた。つまり日本の中東外交は極めて中立的な立場をとっていると断言できる。従って、今回のテロリストの言動は彼らの勉強不足のなす業であり、許しがたい暴挙であると言わざるを得ない。
 日本では野党やマスコミが、安倍総理がイスラエル訪問をしたからテロが起きたとか、人質救出に自衛隊を投入するとアメリカのようにテロと真っ向から対立することになるとか、あるいは報復を主張すると憎しみの連鎖が始まるという理由で、事実上何もしないのが一番だとする意見が多く散見される。
 しかし私は、そのような意見こそテロを助長する危険性があると思う。日本国としては、国民を一人でも殺害したら、犯人をどこまでも追いかけて行って捕えて罪を償わせるという国家の強い意志が明示されることが必要だと思う。そのことが日本人に対するテロを未然に抑止すると思う。
 日本政府はさっそく国際社会や国際機関と連携し、自衛隊を派遣しテロリスト犯を捕える行動を、法整備も含めて具体的に検討すべきと考える。野放しにされたテロリスト犯は、今後も日本人の殺害を繰り返すことになりかねない。しかし、国家としてそれだけは許してはいけない。