「もろはのつるぎ」初期型。

 

 

 

「もろはのつるぎ」中期型。

 

 

「もろはのつるぎ」後期型。

 

 

 前回、「武術・戦闘の世界」と「料理の世界」で、「片刃と両刃(偏刃と諸刃)」の指す意味が違うことについて述べたところである。

 

片刃と両刃(偏刃と諸刃)

 

 「両刃」は「りょうば」と読むだけではなく「もろは」とも読み、「諸刃」の字をあてることもある。

 とすると、レトロゲームマニアとしては触れておかなければならない武器がある。

 それは、『ドラゴンクエスト』シリーズの「もろはのつるぎ」のことである。

 おそらくは、「両刃の剣(もろはのつるぎ、りょうばのつるぎ)」「諸刃の刃(もろはのやいば)」の譬えからイメージした剣ということになるが、扱っているうちに自分自身までも傷つけてしまうイメージを膨らました外観なのであろう。

 興味深いことに、発表されたその外観は三度も変わっている。逆に言えば、ゲーム中では「自分もダメ-ジを受ける剣」と言う特徴だけが強調され、詳細な画像は表示されていなかったことになる。

 

 まず、一枚目の画像の初期型だが、通常の両刃の剣はほぼ平面の刀身の左右に刃が付いたものとなるはずである。ところがこの初期型、刀身が平面ではなく、上部(前部?)から眺めると十字のように刃がついているように見える。どうやって、鞘に納めるのであろうか?まさにファンタジー世界の剣である。むやみに振り回せば、下部(後部)にある複数の刃部先端で、自身を傷つけることになるだろう。

 広辞苑第5版で「諸(もろ)」を調べると、一つ目の意味に「二つの」とある。通常の剣の「諸刃・両刃」は、こちらを指す。二つ目の意味に「多くの。もろもろの」とある。この「もろはのつるぎ」初期型は、どうやら二つ目の意味で外見をデザインしてしまったようだ。

 

 次に、二枚目の画像の中期型を見てみよう。複雑な曲線を描いている上に、多くの突起があり、間違いなく自身を傷つけてしまいそうなデザインである。前回の記事を振り返ってみよう。「武術・戦闘の世界」では左右両側に刃があるか否かで「両刃・片刃」が決まる。それに対して「料理の世界」では刃を両側から研いでV字型にするか、片側のみ研いでレの字型にするかで「両刃・片刃」が決まる。ところが、この中期型は、さらに別の意味で「両刃」の言葉を使用している可能性まである。それは、「柄(つか)の両方から刃が出ている」との意味かもしれないからだ。これは、自分を傷つけやすい。相手に大きい方の刃を向ければ、小さい方の刃は基本的に自分の方を向く。

 

 最後に、後期型である。本来の「もろは」の意味に最も近いデザインとなっている。ただ、切れ味がありそうには見えない。刃のない方の柄の先を尖らせる必要性は何なのだろう?

 

 みなさんが覚えていた「もろはのつるぎ」の外観は、初期型、中期型、後期型のいずれだったでしょうか?

 

 

※辰の年の3月、『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザインをされた、鳥山明さん、小説版『ドラゴンクエスト』のイラストを描かれた、いのまたむつみさんが天に召されました。心よりご冥福をお祈りしたします。