以前に、

 

武術・武道・格闘技の技を出す瞬間は、息を止めているのか?息を吐いているのか?

 

と言うタイトルの記事をアップした。

 その中で、永田晟が講談社ブルーバックスとして執筆した『呼吸の奥義』と『呼吸の極意』の以下のような内容に疑問を呈した。

 

「 スポーツには、大別して持久力型スポーツと瞬発力型スポーツがある。これを三分する場合には、射撃や弓道などの集中力型スポーツがあり、呼吸の乱れと精神の乱れが微細な振動を生じ、命中率を下げる。

 瞬発力型スポーツは短距離走やウェイトリフティングが該当し、無酸素運動である。瞬発力型スポーツでは、パワー発揮の瞬間に息を止める。短距離走の場合、構えに入ったら、いったん息を十分に吸い込み、コールの直前までゆっくりと吐いていく。コールとともに息を止めてピストル音で一気にダッシュする。いったん息を止めたら、ゴールまで決して呼吸しない。ウェイトリフティングでは、クラウチング姿勢が、息を整える準備態勢で、少し息を吐きだし、止めると同時に一気にバーベルを持ち上げる。

 相撲の立ち合いは、相手の呼吸を見て、呼息から吸息への変わり目が両者で一致すると、立ち合いが成立する。横綱ともなると、腰を割って、手を正しくついて、息を止めた状態で相手がいつ立っても応じられるような待機姿勢を取る。剣道は、礼と構えのあと、竹刀が接触したとき、少し息を吐き、止める。打つ、突く等の技を仕掛けたときには、息を止めている。残身のときに、再び息を吐き、吐き切る。柔道は、呼息中心で、少しずつ吐いていき、技を仕掛ける瞬間に息を止める。技を仕掛けた後は止息をやめ、技の動作中は思い切り息を吸い込んでいく。」

 

「 『呼吸の極意』では、剣道や柔道で仕掛けるときは息を止めて、短距離走やウェイトリフティングは瞬発力のために息を止める。だが合気道は、息を吐きだすことで全身のパワー(丹田力)を増大する、とある。ところが前著『呼吸の奥義』には、合気道の技をかけるための力の集中は、止息状態でおこなわれる、とある。また、柔道では技を仕掛けた後は息を吸い込んでいく、とある。」

 

 

 このたび、2022年8月10日発行の『Tarzan特別編集 呼吸と姿勢を整える』を読み終わった。その中には以下のような記述があった。東京農工名誉教授の田中幸夫への取材協力による。

 

「瞬発系の動作でも息は止めないものだ。 バッティングだけでなく、ゴルフのティーショットでも、1拍息を止めて構え、静かに吐きながらスイングするもの。全身への酸素供給が欠かせない長距離走でも一気に吐いたりは決してしないのだ。」

 

「筋トレの指導を受けたことのある人も、力を発揮するときは心臓に負担をかけてないよう、息を吐きながらすることを知っているはず。だが最大筋力で重量物を上げたいトレーニーは、呼吸を止め、腹圧を高めて上げるが、これは心臓をはじめ、循環器系に重い負担を強いるリスキーな手法(怒責という)。大きな力は出やすいが、筋肉が震えやすく、繊細な動きもしづらくなる。」

 

「(数値には諸説あるが)出そうと思っても人は最大筋力の40%くらいまでしか力を出せず、心理的な限界に達することで運動を終えてしまうものです。温存しているパワーを少しでも引き出すには、心理的限界という重しを軽くすることです。呼吸を正すことで脱力し、自律神経系を整えられれば、パフォーマンスも上がるでしょう。」

 

 

※関連リンク先

『呼吸の科学(講談社ブルーバックス)』を読み終える。 | 武術とレトロゲーム (ameblo.jp)