都内の名曲喫茶巡り第2弾。
新宿から西へ向かう中央線沿線は名曲喫茶の宝庫。
都内で10軒前後しか残っていない名曲喫茶の半数近くは中央線沿線に存在する。
高円寺の駅を降り、商店街を抜け、住宅地の一角にたたずむそのお店。
昭和30年創業の名曲喫茶「ネルケン」さん。
一歩店内に足を踏み入れるとそこは別世界。
私の母親位の年齢のマダムに案内され、スピーカーから3つ目のテーブル席に案内される。
おそらく一番音響がいい席なのだろう。
立ち振る舞いから言葉遣いまでなんと上品な女性であろうか。
60年以上お店を守ってきた看板マダムだ。
チーズとベーコンのトーストとクリームソーダを注文。
目を閉じスピーカーから流れてくる曲に耳を傾ける。
シューベルトの歌曲だが透き通るテノールの声の持ち主は誰だろう。
「今掛かっている曲の歌手は誰ですか?」
マダムに聞いてみると、
「イギリスの歌手イアン・ボストリッジでございます」
ボストリッジの魅力を迫力と繊細に伝えてくれるオーディオシステムも素晴らしい。
これまで聴いた名曲喫茶でもトップクラスの音だ。
コンサートホールを貸し切りにして一人で聴いているかのような贅沢な時間。
「たいへんお待たせしました」
静かにささやくマダムの声に目を開けるとトーストの焼き上がりだ。
●チーズベーコントースト+クリームソーダ(370円+580円)
値段も昔のままな。
チェーン店のトースト並みの値段で心のこもった手料理が味わえる贅沢。
焼きたてのトースト。
昔懐かしいクリームソーダ。
それではいただきます
う~ん、ひゃっこい!
とろ~り蕩けるチーズにベーコン。
一切れのピーマンがいいアクセント。
食べ終わる頃には曲も変りバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」
これも聴いていくか。
いつも美味しい食事に感謝をこめて
「ごちそうさま!」
【本日の名曲コーナー】
シューベルト作曲「冬の旅」から『郵便馬車』
ラッパを鳴らしてあの人が住む町から郵便馬車がやってくる。
どんなに期待しても手紙なんか来ないのに・・・
歌はもちろんイアン・ボストリッジ。
【お店】
・名曲喫茶ネルケン
・東京都杉並区高円寺南3-56-7