☆アーティスト
&エスペランサ・スポルディング
(FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING)
☆アルバム
アライヴ・アット・
(ALIVE AT THE VILLAGE VANGUARD)
2023年1月に発表された
ピアノとヴォーカルの
シンプルなアルバムで
ヴォーカルの
エスペランサ・スポルディングは
好きなアルバム その-45
オスカー・ピーターソンの世界
おまけ-01 へ
オン・ザ・サニー・サイド・オヴ・ザ・ストリート
(On The Sunny Side Of The Street) の
2016年ライヴを貼っています
今回アップの
アルバム・レコーディングは
ニューヨークの老舗ジャズ・クラブ
2018年10月19日~21日
金曜から日曜日の1晩2ステージ
合計6ステージのライヴから
ベスト・テイク8曲を選んで
週末の空気感が伝わる様
再編成したヴァーチャルな
セット・リストとの事です
ヴィレッジ・ヴァンガードは
1934年に開店予定をしていた店が
裏に教会が有り営業許可が下りず
オーナーのマックス・コードン
(MAX GORDON)は
営業許可に必要な2ヶ所のトイレと
2か所の出入口の有る地下のバー
ゴールデン・トライアングル
(THE GOLDEN TRIANGLES)を買い取り
三角に似た広くない構造の店内や
ステージ前の木の床はそのままに
店名をヴィレッジ・ヴァンガードに変え
1935年にオープン
開店当初は音楽家のみならず
幅広く芸術家が集う店でしたが
店の構造からか残響や反射音で
楽器が独特の音に聴こえると言われ
ジャズのプレイヤーが集まりだし
1940年代後半からジャズ専門の
ライブ・ハウスとなった様で
セロニアス・モンク
(THELONIUS MONK=1917-1982)
マイルス・デイヴィス
(MILES DAVIS=1926-1911)
ジョン・コルトレーン
(JOHN COLTRANE=1926-1967)
ビル・エヴァンス
(BILL EVANS=1929-1980)
ソニー・ロリンズ
(SONNY ROLLINS=1930-)他
そうそうたるメンバーが
ライヴやレコーディングをしそうです
フレッドとエスペランサの
出会いは2012年頃
フレッドのトリオを
ヴィレッジ・ヴァンガードへ
聴きに行ったエスペランサが
感動を伝えに行ったのがきっかけで
翌2013年に初共演
2018年5月に再び共演
同年10月に3回目の共演が
今回のアルバムとなっています
二人の紹介ですが
♪ピアノの
フレッド・ハーシュは
1955年オハイオ州生まれ
8歳で作曲を始め
10歳でコンクールに優勝
大学時代にジャズに興味を持ち
卒業後はジャズ・ピアノを教えていた様で
ブラッド・メルドー
(BRAD MEHLDAU=1970-)も
教え子だったそうです
2008年ウィルスが脳に入り
昏睡状態になった時に見た夢が
2曲目のドリーム・オブ・モンクの
作曲となったそうです
♪ヴォーカルの
エスペランサ・スポルディングは
バークリー音楽大学の学部長
ゲイリー・バートン
(GARY BURTON=1943-)が
天才ベーシストと評した様で
歌う様になったのは
シャワーを使いながら歌っていて
それを聴いた友人に勧められたのが
きっかけだそうです
1984年オレゴン州
ポートランド生まれ
幼少期にヴァイオリンを習い
5歳の時にはオレゴン室内楽協会で
バイオリニストとして演奏しています
高校時代に独学で
ベースやギターを始め
ピアノやオーボエや
クラリネットも弾いていた様です
あまり裕福な家庭ではなく
大学進学の選択肢は
奨学制度で学資免除と
住まいから通える距離で
ポートランド州立大学に入学
ベースの才能を見抜いた教授は
バークリー音楽大学へ転入を勧め
オーディション受けた結果
学資免除の特待生となるも
ボストンへ行く旅費が無く
友人が寄付集めのコンサートを
企画したそうです
入学後も経済的には苦しく
一時は音楽家を諦め掛けましたが
エスペランサの前に
バークリー最年少講師だった
OBのギタリスト
パト・メセニー
(PAT METHENY=1954-)の
助力も有り
飛び級で無事卒業
最年少講師の一人として
バークリーの教壇に立っていて
2017年らか2022年には
ハーバード大学で音楽実践の
教授にもなっています
2009年ノーベル平和賞授賞式では
授賞者のリクエストに応える伝統で
オバマ大統領から指名され
オスロ市庁舎と平和賞コンサートで
連日のライヴが話題となりました
今回はベースを持たず
ヴォーカルに専念で
総ての曲では有りませんが
スタンダード・ジャズを収録した
初めてのアルバムです
収録曲は8曲と少ないのですが
短い曲で4分強
長い曲で12分を超え
トータル1時間以上で
フレッドはライナー・ノーツに
曲ごとのコメントを載せ
一部を紹介しました
(BUT NOT FOR ME)
好きなアルバム その-12
3曲目でダイアナ・クラールが
ヴァース(VERSE=導入部)付の
ソロをアップした曲で
1930年の
(JUDY GARLAND=1922-1969)が
主演したミュージカル
「ガール・クレイジー」
(GIRL CRAZY)に
ジョージ・ガーシュウィン
(作曲:弟George=1898~1937)と
アイラ・ガーシュウィン
(作詞:兄Ira=1896~1983)の
兄弟が書き下ろした失恋の曲で
今回アップのアルバムでは
ヴァースを省略し
エスペランサは気分で
一部に即興の歌詞を付けていて
ライナー・ノーツに
『エスペランサのチョイスだ
彼女は曲の一部を引用して
ユーモラスな詩をつけた。
私も影響されて
ちょっと洒脱なプレイをしてみた』と
書いています
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - BUT NOT FOR ME
▼エラ・フィッツジェラルドのヴァース無で
♪バット・ノット・フォー・ミー
Ella Fitzgerald - But Not For Me
02-ドリーム・オブ・モンク
(DREAM OF MONK)
(HERSCH)
作曲も作詞もフレッドで
ライナー・ノーツに
『私が昏睡状態の時に見た
セロニアス・モンクが
顕われた夢を書いた作品
その夢の中で私とモンクは
立てないほどの狭い檻に
それぞれ閉じ込められている
誰かが来てライトをつけ
五線紙と鉛筆を渡され
早く曲が書けた方を
開放すると言われた
私は必死になって作曲をした
モンクを見ると最初と同じように
座って微笑んでいて
何もしていなかった
モンクの愛すべき人柄や
音楽について歌っている』と
書かれています
夢に出てきたモンクとは
ビバップ(BEBOP)を
代表するピアニストで作曲家
セレニアス・モンクです
▼アルバムから♪ドリーム・オブ・モンク
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - DREAM OF MONK
ビバップ(BEBOP)を代表する
アルト・サックス奏者
チャーリー・パーカー
(CHARLIE PARKER=1920-1955)が
作曲し1951年に発表した
アフリカ系キューバ人の音楽
(アフロ・キューバン・ミュージック=
AFRO-CUBAN MUSIC)の一種
カリプソ(CALYPSO)の曲
曲名がマイ・リトル・スウェード・シューズ
(MY LITTLE SUEDE SHOES)と
される事もあります
『エスペランサは実際に
スウェードの靴を履いていて
即興の歌詞も良かった』と
書かれています
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - LITTLE SUEDE SHOES
▼スタジオ・ジャムのトリオで
♪リトル・スウェード・シューズ
Studio Jams #58 - "Little Suede Shoes"
04-ガール・トーク
作詞は
ジュリー・ロンドンの
2番目のご主人
ボビー・トループ
(BOBBY TROUP=1918-1999)
作曲は
ニール・ヘフティー
(NEAL HEFTI=1922-2008)で
1965年の映画ハーロウ(HARLOW)の
挿入歌として書かれています
ライナー・ノーツに
『アルバムに収録するには
長すぎることを忘れて
パフォーマンスに没頭した
オーディエンスのリアクションも
エスペランサのシニカルな
歌詞がうけて素晴らしかった
彼女は毎晩違う即興のストーリーを
歌っていた
演奏もストーリーも
ベストなものをセレクトした』と書かれ
12分08秒の長い曲となっています
Fred Hersch & esperana spalding | "Girl Talk"
▼ティロ・ヴォルフ・ビッグ・バンドと
絶妙なハーモニーのブォックス5で
♪ガール・トーク
Girl Talk - Thilo Wolf Big Band feat. Vox 5
05-エヴィデンス
(EVIDENCE)
2曲目のドリーム・オブ・モンクで
フレッドの夢に出てきた
セレニアス・モンクが
1983年に発表した
アルバムのタイトル曲で
作曲はモンクです
ライナー・ノーツに
『私がエヴィデンスを弾き出して
エスペランサがフォローしてくれた曲
このアルバムの中で私のソロは
この曲が一番ストロングだと思う』と
書かれています
▼アルバムのライヴ映像で♪エヴィデンス
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - EVIDENCE
▼セロニアス・モンクで♪エヴィデンス
Thelonious Monk - Evidence
06-サム・アザー・タイム
同名で異なる曲が有りますが
このアルバム収録曲は
1944年の映画
ステップ・ライヴリー
(STEP LIVELY)で
フランク・シナトラが歌った曲
ライターは
タイム・アフター・タイム
(TIME AFTER TIME)を
書いたコンビで
作詞はサミー・カーン
(SAMMY CAHN=1913-1993)と
作曲はジュール・スタイン
(JULE STYNE=1905-1994)
ライナー・ノーツには
『多くの人は同じタイトルの
レナード・バーンスタイン
(LEONARD BERNSTEIN=1918-1990)の
曲を思い出すが
この曲はカーン&スタインの
ベストな曲だと思う
アルバムの中に典型的なバラードを
一曲入れたいと思っていて
この演奏がフィットした
エスペランサは少しだけ
ベティー・カーター
(BETTY CARTER=1929-1998)を
意識しているかもしれない』と
書かれています
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - SOME OTHER TIME
▼ベティー・カーターで
♪サム・アザー・タイム
Betty Carter - Some Other Time
07-ロロ
(LORO)
ライターはリオデジャネイロ州生まれた
ピアニストで作曲家
ギターは独学で学んだ
(EGBERTO GISMONT=1947-)
ライナー・ノーツには
『エスペランサの
リズム・フィールは素晴らしく
私たちはテンションの髙い
インター・プレイをエンジョイした
ブラジリアン・ミュージックは私も大好きで
キャリアの中で幾度となく演奏している』と
書かれています
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - LORO
▼エグベルト・ジスモンティのピアノで
♪ロロ
Loro, Egberto Gismonti
08-ア・ウィッシュ
(A WISH)
2001年のバレンタインデーに
フレットが作曲したValentineに
言葉の無い即興演奏で知られる
イギリスの女性ジャズ歌手の
ノーマ・ウィンストン
(NORMA WINSTON=1941-)が
後に詩を書いた綺麗なメロディーの曲で
ライナー・ノーツには
『これはアンコールとして
エスペランサもストレートに
メロディーと詩を歌った
私のオリジナル”Valentine”に
素晴らしい詩を付けてくれて
“Wish”となった
多くのシンガーとピアニストが
演奏してくれている
この曲も20分で生れた曲だが
私オリジナルの中では
最もポピュラーな曲だと思う
私にとって大切な曲だ』と
書かれていています
▼アルバムから♪ア・ウィッシュ
FRED HERSCH & ESPERANZA SPALDING - A WISH
▼作詞をしたノーマ・ウィンストンの歌と
フレッドのピアノで♪ア・ウィッシュ
Fred Hersch & Norma Winstone - A Wish (Valentine)
追記
アレンジもさることながら
アドリブやスキャット
即興詩も織り交ぜ
妻曰く『次に何が出てくるか
聴いていて難しい』と
言っています
私も同感なのですが
他のエスペランサのアルバムより
少し解りやすいかもです
おまけ-01
エスペランサのベース・ライブです
ダブル・ベースで
▼スティーヴィー・ワンダーのカヴァーで
♪オーヴァージョイド
Esperanza Spalding: "Overjoyed"
▼エレクトリック・ベースで
RADIO MUSIC SOCIETYのアルバム収録曲
Esperanza Spalding - Endangered Species
お礼
何時ものことながら
長々とお付合い頂き
心より感謝申し上げます
鬱陶しい季節となりますが
健やかにお過ごし頂きたく
願っております