少年時代の発熱時の幻想を見事に歌詞化!
自ら映像化もした、松本隆版「銀河鉄道の夜」。
2021年秋開催の松本隆作詞活動50周年記念ライブ「風街オデッセイ」に、ギタリスト鈴木茂は2日間出演。「砂の女」と「微熱少年」を両日演奏した。
2曲は、1975年の鈴木の初ソロアルバム「BAND WAGON」収録曲。
まだ歌謡曲の作詞家として名高くなる前の松本の、作家性の高い歌詞が際立っている。
「微熱少年」は「俄か雨降る午後に 体温計を挟み」「天井の木目 ゆらゆらと揺れて」と、発熱して部屋で寝る少年の幻想的な夢を描いた曲。
松本の歌詞は「窓のガラスを叩く」雨音や「遠い電車の響き」という聴覚の世界と、「路面電車」が「銀河へと」浮かんで行く幻覚の世界が交差。聴覚だけが研ぎ澄まされ、頭の中はとりとめない幻覚に支配される発熱状態を巧みに描いている。
鈴木も曲の随所でスライドギターを聴かせ、路面電車の走る音を模写し、歌詞とギター演奏が見事に相乗。
ひとしきり幻想世界を彷徨った少年が「目覚めれば誰もいない」夜の部屋。
何時間眠ったのかわからぬまま、少し熱も収まり…と、体調不良時の混乱と安堵とを、この曲ではリアルに体感できる。
85年、松本はこの曲と同タイトルの自伝的小説を上梓。
87年に自ら監督を務め映画化。
ビートルズ来日を控えた60年代半ば、仲間とバンドを組む男子高校生が主人公。
ビートルズ公演のチケットを貰うことを条件に、バンドマンから東京タワーにリボンをかけるよう言われた主人公が、夜のタワーによじ登るシーンがクライマックスで、視覚的に映える場面を多く連ねたミュージックビデオ的な味わいの作品。
主演の斉藤隆治(斉藤由貴の実弟)の演技がかなり棒だったこともあり、桑田佳祐や村上龍と同様、当時流行りの文化人監督映画として、あまり高い評価は得られなかった。
が、劇中には松本作詞曲が多く使われ、「微熱少年」の歌詞で描かれた路面電車の幻夢も映像化。車掌役は細野晴臣!
楽曲「微熱少年」好きは、このシーンだけでも見る価値大。
作詞:松本隆
作曲・編曲:鈴木茂
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