自転車連ねて コンビニエンスへ駆け込んで行く…。
少年たちのささやかな自由時間を描いた、優しい冬ソング!
「声にはならないけど、心の中にどっかにひっかかってる気持ちの破片を綴って歌いたい」
シンガーソングライター・染谷俊は、近年のインタビューでそう語っている。
染谷は、幼少からピアノの英才教育を受け、武蔵野音大ピアノ科に進学。
在学中に佐野元春を聴いてロックに目覚め、卒業後バンドを結成。
1993年、シングル「崖っぷちの少年」でデビュー。
染谷のデビュー前年、同じソニー所属の尾崎豊が突然死。
若者たちの生きる不安や大人への反抗心を赤裸々に綴った尾崎の楽曲は、10代を中心に爆発的な支持を受けていた。
染谷は、この尾崎のフォローワーと目され、尾崎担当だった西本明や松田聖子を手がけた大村雅朗ら、豪華アレンジャーがアルバムに参加。恵まれたデビューだった。
染谷の楽曲は、尾崎と同様、若者の心象風景を西海岸風サウンドに乗せたボーイズ・ロック。振り絞るような切迫感溢れる歌唱法も、尾崎を彷彿とさせた。
が、「盗んだバイクで走り出」し「夜の校舎 窓ガラス壊して回った」尾崎の破壊衝動は、染谷の歌詞には見られない。
「ウォールタイム」は、93年のシングルCW曲。
夜のコンビニの店の前にたむろう少年たちを描いたウインターソング。
「何だか寂しそう しょうがない何か奢ってやるか」と、仲間どうしで缶コーヒーを奢り合い、「チョコパンかじって ガードレールに影を並べ」る少年たち。
学校や塾通いの過密な日常の合間、立ち寄ったコンビニで過ごす少年たちのささやかな自由時間を、染谷は優しい目線でスケッチ。
家庭や学校で反抗する事もなく、大人しく日々を営む普通の少年たちに内在する「なりたいものもわからなくて」「やりたいことに近づけない」という漠たる不安を綴った歌詞は、染谷ならではの暖かな目線に基づくものだった。
染谷は、近年はインディーズからピアノのインスト作品もリリース。
優しく繊細なロックンロールという稀有な作風は健在。精力的にライブ活動を展開している。
「ウォールタイム」
作詞・作曲:染谷俊
編曲:八代恒彦
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