”死”から”人生”へ

 海外の名曲を日本語に訳して歌唱することが多くあるが、今回紹介する楽曲はその中でも群を抜いて有名だろう。この楽曲について、より解剖して紹介していく。

 

マイ・ウェイ/作詞:G.Thibaut 作曲:J.Revaux C.Francois 訳詞:片桐和子

 

歌詞からの違い

 マイ・ウェイは今から55年前の1969年にフランク・シナトラがリリースした。日本では1972年に布施明と尾崎紀世彦が歌唱した。訳詞は加山雄三の楽曲を多く手がけた岩谷時子や中島潤などいくつかあった。

 布施が歌唱したマイ・ウェイは中島潤が訳詞をしたと思われていたバージョンだ。中島は布施が尊敬していた歌手であったが、突然の死去でこの世から旅だった。そのため、布施は「中島潤」の名前を後世に残すべく、シングルのB面に急遽収録することにしたそうだ。

 その時、出だしの歌詞は「今 黄昏 近づく人生に」となっていたが、若かった布施にマイ・ウェイという「自分の死が近付く中での自分の人生に、後悔せず自信を持っている」とのテーマの歌詞が重すぎた。そのため、「今 船出が 近づくこの時に」と自分で歌詞を変えて歌唱し、”死”への旅たちから、”人生”の旅立ちへと変化していった。

 シングルのB面に収録された楽曲ではあったがその年の「第23回NHK紅白歌合戦」で歌唱し、多くの人が認知することとなる。その後に、訳詞は中島潤が行ったのではなく、片桐和子が行っていたことが判明し、現在は片桐和子の名前に変更されている。

 余談だが、片桐和子は東京音楽院時代の布施明の教師だったそうだ。この楽曲には布施明と縁のある人物によってつくられたサブストーリも隠れている。

 

編曲からの違い

 1972年当時はフォークソングが全盛期だったため、ギターやバイオリンなどフォーク調の編曲となっていた。布施明がマイ・ウェイを発表して半世紀以上たっているため、布施明自身も何度もセルフカバーしており、2007年リリースのアルバム「エッセンシャル・ベスト」ではピアノやオルガン調のメロディーがさえわたる編曲に、昨年リリースのEP「Us.」ではピアノと布施の歌唱と言うシンプルな編曲となっている。

 このように様々なバージョンがある楽曲となっているが、筆者一押しの編曲は2012年リリースのアルバム「Way of the Maestro」に収録された藤野浩一編曲のフルオーケストラバージョンだ。所謂、「うたコン(NHK総合)」で歌唱しているバージョンだ。この編曲はオーケストラの迫力と布施明の圧倒的な歌唱力が組み合わさった非常に完成度が高いものとなっている。

↓↓「Way of the Maestro」のレコーディング風景↓↓

 

圧倒的な歌唱力

 マイ・ウェイに限らず、布施明と言ったら「圧倒的な歌唱力」だろう。驚くべきことが、年を重ねるごとにその歌唱力が進化していることだ。

 特にこの楽曲は、徐々に盛り上がっていく部分は特徴的で、大サビにくる迫力のある歌声がなければまとまらない楽曲だ。「シクラメンのかほり」や「君は薔薇より美しい」は若手歌手も多くカバーしており、広く愛されているが、この楽曲に関してはミュージカル出演しているボーカリストや誰もが認める歌唱力を持った歌手以外はカバーしていない。

 現在の音楽番組で布施明のマイ・ウェイが聴くことが出来る場面は少なくなった。地上波ではNHKが放送している音楽番組ぐらいだ。

 若者やSNSを中心に布施明の歌唱力が再評価されている。2009年の大晦日「第60回NHK紅白歌合戦」では紅白勇退宣言をしているが、今後も多くの音楽番組やコンサートでその圧倒的な歌声を多くの人に届けてくれるだろう。

 

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