全歌手注目が前提

 

 12月22日に「第74回NHK紅白歌合戦」の歌唱曲目が発表された。これに関しての全体としての評価は「紅白最新情報③」で書いた。今回はその中でも筆者が注目している歌手を紅・白それぞれ3組紹介する。しかし、見出しの通り「全歌手注目」であり特別な歌唱と言うのが前提にあり、今年は例年に増して歌唱力が評価されている歌手が多いだろう。

↓↓「紅白最新情報③」↓↓

 

紹介の前に「言いたいこと」

 現在はCDやYouTube、Spotifyなどの音楽を聴く媒体が利用できる。これは「自分自身が聴きたい曲」が中心となっている。音楽配信サービス・Spotifyでは、この時期に「Spotifyまとめ」が発表されて自分自身が今年、一番聴いた歌手・楽曲を知ることが出来る。

 筆者は2つのアカウントで登録しており以下のような歌手・楽曲を聴いていた。これを紹介する理由は、これから紹介する歌手が筆者の好みで構成していないことを示すためだ。

 そして、もう一つ言いたいことがある。それは「『演歌・歌謡曲』への親しみが薄くなっていること」だ。

 民放が放送しているレギュラーの音楽番組(地上波に限る)には「演歌・歌謡曲」の歌手が出演しない。今年は各放送局が忖度していたことが話題となったが、「若者より」傾向が本当にテレビを盛り上げるわけではないだろう。それと共に「演歌・歌謡曲」を「輝かしい過去の産物」のように扱う傾向にあることにも疑問符が浮かんでくる。

 そのような状況下で紅白に「演歌・歌謡曲」の歌手を大量投入することはできないだろう。地上波のテレビで歌唱している歌手が演歌歌手よりK-pop歌手が多くなっている。ショッピングモール等にあるCDコーナで置いてあるCDを見てもその傾向にある。このような流行を伝え、それと同時に流行を転換できる番組が「紅白歌合戦」だと感じている。

 今年の紅白では9年間続いた「演歌歌手にカバー曲を歌唱させる」ことが無くなり、歌手の中には特別企画にも参加する。これは大きな一歩だろう。そんなことも頭に置きながら注目歌手紹介へ移ろう(紹介は五十音順)。

↓↓歌唱曲目プレイリスト↓↓

 

伊藤蘭|キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー

 今年、紅白にソロで初出場した伊藤蘭。キャンディーズとして第26回(1975年)に初出場し、4年連続・通算4回出場した。キャンディーズ解散後は長らく音楽活動から遠ざかっていたが、2019年からソロ活動を始めた。

 筆者が最も注目した部分は「ブランクを感じさせない歌唱力」だ。下の動画はキャンディーズの解散を発表した日比谷公園大音楽堂で2021年に行ったライブの模様だ。「春一番」を昔と変わらないキーで軽々しく歌唱していることには驚きしかない。元祖アイドル的存在のキャンディーズの楽曲が令和の紅白に響き渡る。

 

大泉洋|あの空に立つ塔のように

 テレビ70年史でこれほどまでに「テレビを愛し、テレビから愛させた」人は数少ないだろう。北海道の深夜ローカル番組を全国の人が知る番組となったことは異例だ。音楽面でも、北海道限定シングル「本日のスープ」が全国的な話題を呼び、全国リリースとなり「MUSIC STATION」に出演したことも異例だろう。

 また、テレビ番組や映画でも歌唱しており、10月暮に発表した楽曲を11月2日に生放送された「SONGS」で歌唱。この回は総集編を除いた今年の視聴率で1位となった。出場が決定した時には賛否が分かれたが、持ち前の歌唱力で視聴者を魅了することは間違いないだろう。

 

NiziU|Make you happy

 筆者が曲目発表で驚いた歌手の一人でもある歌手がNiziUだ。何故なら今年リリースした「Paradise」では持ち前の歌唱力を存分に発揮させたからだ。逆に言えば、この曲がなければ紅白には出場できなかっただろう。”アイドル”と簡単に表現するが「可愛さ」や「ダンスが魅力」だけでは現在のアイドル界では勝負できないだろう。やはり「歌唱力」と言うことも重視される。それはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」での歌唱や今年は「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)で披露した。

 今年、韓国デビューを果たしたNiziU。昨年までの活動が第1ステップだとしたら、今年は第2ステップの始まりとなる。そのように考えると紅白で原点回帰・まだ見ぬ未来に向けて、この曲を歌唱することはとても意義があることだろう。

 

藤井フミヤ|TRUE LOVE、白い雲のように

 チェッカーズから40年が経ち、ソロデビューからも30年が経った今年、紅白に返り咲いて「TRUE LOVE」を歌唱することは自身が掲げる「『TRUE LOVE』上を向いて歩こう計画(誰もが歌詞がわかり、歌える曲となること)」にも通じる部分があるだろう。

 更に、猿岩石への楽曲提供である「白い雲のように」を司会・有吉弘行と歌唱する。昨年の紅白でも話題となったこの曲。二人の楽曲への想いがこの楽曲を新たな色彩で映すだろう。

 2つの楽曲は多くの歌手から歌い継がれている楽曲だ。令和の今だからこそスタンダードナンバーとしてより鮮明に輝いているともいえるだろう。

 

緑黄色社会|キャラクター

 近年は楽曲の流行り・廃りが激しい。そのため、紅白の初出場歌手が2年連続で出場することは難しくなっている。昨年は2組が2年連続出場だった。そんな中、今年は4組が2年連続出場を果たした。その中でもバンドとして2年連続出場を果たした緑黄色社会。

 今回、緑黄色社会は高校生吹奏楽部・チアリーディング部との共演だ。紅白と言えば人海戦術、そして3生(生放送・生歌唱・生演奏)だ。これを象徴するような歌唱を行うことは紅白ファンとして注目しないわけがない。来年は「NHK全国学校音楽コンクール」の中学生の部・課題曲を担当する。それに弾みをつけるような華やかでパワフルな歌唱となるだろう。

 

山内惠介|恋する街角

 上でも書いたが、楽曲の流行り・廃りが激しい。紅白では演歌歌手の少ないと声が挙がっている。そんな中、9年連続で出場できていることは異例と言っても良いだろう。山内惠介は演歌に囚われず幅広い楽曲を歌唱している。今年はアニメ主題歌やクレージーケンバンド・横山剣からの楽曲提供があった。だからこそ、曲目発表で驚いた歌手でもある。

 9年連続出場で「国民的演歌歌手」へのフェーズに入ってきた。その紅白での「恋する街角」の歌唱は好評を博す。昨年の「きつねダンスRemix」は音楽評論家・スージー鈴木も絶賛していた。「山内惠介と言えば『恋する街角』」と言う代名詞が付くことで、より演歌歌手としての存在感を増すことが出来るだろう。

 最初に触れた、「民放の音楽番組に演歌歌手を」のために「恋する街角」の歌唱で魅力を存分に発揮し、来年はタモリから「続いては山内惠介です」と紹介されることを期待している。