後編

 前編では「紅白と海外歌手」の関係について多角的に焦点を当てた。後編であるこの記事では最も触れにくいであろう「視聴率」に関して、過去5年を例に挙げて見ていくことにしよう。

※視聴率だけが番組の良し悪しを決めるものではないことをご承知おき下さい(後述する)。

↓↓前編↓↓

 

今も”豪華”がよい?

 昨年、第73回では上下可動式のモニタを効果的に利用したり、SONGSの舞台セット利用したりと極めてシンプルで舞台は広々としていた。しかし、客席をカメラが映すと狭いような雰囲気があった。

 一昨年、第72回では会場がNHKホールではなく、東京国際フォーラム・ホールAだったため例年の客席に張り出す階段はなく、舞台を大田市場で廃棄されるはずだった生花で飾るという舞台セットで豪華ではあったが、紅白の舞台セットではないような印象だった。

 コロナ禍で無観客であった第71回は客席を大胆に撤去し、円状の階段など舞台が広く、豪華な舞台セットであった。第70回、第69回はLEDモニタを後方にあったものの、第69回の方が奥行きがあり、シンプルながらも豪華な舞台セットであった。

 このように比較すると、視聴率が高かった第69回、第71回は舞台が広く(奥行きがある)、豪華なセットであることが共通している。他が「豪華ではない」わけではないが、舞台セットが狭く感じることが近年の紅白には感じられる。また、第69回と第71回ではモニタに映し出される映像と舞台に設置させているセットが融合していたことも、より広く感じさせる要因となり、視聴者を紅白と言う世界に引き込むことが出来たのだろう。

 昭和や平成初期の紅白は舞台セットを豪華にしていたが、近年は環境配慮を感じさせる舞台セットとなっている。しかし、1年の締めくくりの紅白では、今も”豪華さ”が必要なのかもしれない。

 

珍しい出場歌手

 視聴率がよかった第69回、第71回は特別企画を除く出場歌手を見ても共通点がある。それは、「いつもは出場しない歌手の名前が入っているか」ということだ。第69回は松任谷由実、第71回にはMr.Childrenと全世代が知る歌手で久しぶりに出場しするときに視聴率が高くなる傾向がある。断わっておくが、これ以外の年が豪華歌手がいないと言っているわけでない。ただ傾向があるだけだ。

 そのうえで、特別企画やコーナーでの大物歌手やその年話題の歌手が出場することが大切のように感じる。次はこの特別企画について見ていこう。

 

特別企画は”NHK色”が必要

 第69回、第71回は特別企画にも共通点がある。それは、「NHKだからできる企画」だ。他の年でも企画の中身(放送)を見れば、NHKだからできるとは思うが、告知する際にそれが前面に出ていたのがこの2回である。

 第69回では「夢のキッズショー~平成、その先へ~」、第71回では「連続テレビ小説『エール』」だ。その中でも、連続テレビ小説とのタイアップは特に話題になる。過去5年ではないが、第64回(2013年)の「あまちゃん特別編」も話題となった。

 このように、NHKだからできる企画と言うことが大切なのかもしれない。他局ができる企画は視聴者に興味を与えることが出来ないのかもしれない。

 

SMILE-UP.との関係

 「紅白と視聴率」と言う最も触れにくい事柄の中で、最も触れてはいけない事柄にも果敢に挑もう。しかし、これはセンシティブなことでもある。そのため、読みたい人だけ下のリンクより読んでいただきたい。

↓↓このリンクの拡散はご遠慮下さい↓↓

 

 だが、これだけは言っておきたい。今年の紅白に同事務所が出場しないのは、タレントを守るためである。一部では「ボーダを引いた」や「タレントに罪はない」と言う意見も挙がっている。その通りだ。しかし、この番組は特殊な音楽番組だ。更に、この問題は近年のエンタメ界の問題の中でも吐出して大きい。そのため、出場させることでの社会的影響も多くある。そこには、タレントへの誹謗中傷にもつながるだろ。

 今年のこの問題は、事務所の問題の捌け口がタレントや被害者に向かっている傾向がある。これは2次被害と言ってよいだろう。しかし、今回出場を0にした結果、批判はNHKが全て被って終わった。一方、タレントには愛のあるコメントが寄せられた。

 また、新規依頼の停止は紅白の観覧募集の前であった。ファンにも被害が出ないように考慮することが出来ている。このような部分は多くの人が知っておく必要があるだろ。

 

  今年はどうなる?

 MUSIC LIFEでは「紅白事前調査」で、紅白を視聴するかを問うた。その結果が下の図だ。

 大多数が「視聴する」と答えたが、自分の好きな歌手が出場することで視聴することが伺える。

 現時点で上で挙げた事柄で言えることは「出場歌手」と「特別企画」についてだ。

 12月18日時点で発表されている情報から見ると「出場歌手」では”白組”として、さだまさしが16年ぶりに出場することが決定している。これは、「全世代が知る歌手で久しぶりに出場」と言っても良いだろう。

 「特別企画」ではテレビ放送70年記念「テレビが届けた名曲たち」やNHKの音楽番組「Venue101」から生まれたユニット「ハマいく」の出場が決定している。これは正しく「NHKだからできる企画」だろう。

 これらを勘案すると、視聴率は例年通りかそれよりも高くなるようになるだろう。しかし、近年は視聴率の重要性が無くなってきているように感じる。これについて最後に見ていこう。

 

大切なのは見ている視聴者

 近年はテレビ以外の映像コンテンツが増えた。そのため、視聴率も全体的に低下している。更に、録画機能や見逃し配信など放送終了後も視聴できる。そのため、上の調査でも回答があったように「話題となったら見る」ことが出来る。

 テレビを見ない人が増えた今、テレビを見るように促すことをテレビ局は行っている。しかし、テレビを見ている視聴者を離さないことも大切だ。紅白歌合戦には多くの「紅白ファン」がいる。このファンをガッカリさせないこと。見ている視聴者を離さないことがあったうえで、見ていない人を参入させる必要がある。視聴している人が絶賛するような番組にすることによって自ずと視聴率がよくなるのかもしれない。

 また、紅白はテレビだけでなくラジオでも放送している。更に、現在は「NHK総合」だけでなく、「BSプレミアム4K」や「BS8K」でも放送している。だが、視聴率に含まれるのはリアルタイムで「NHK総合」を視聴している人と見逃し配信を視聴している人だけ。そう考えるといかに紅白を視聴率だけで判断してはいけないかが理解できるだろう。

 平成の紅白は民放の番組に対抗すべく、バラエティー要素が高くなったが、令和に入りその要素は薄くなり、豪華な演出ではなく「聴かせる演出」が多くなってきた。世界情勢も悪かった昨年は「LOVE&PEACE」のテーマで紅白が制作されたが、現実の映像を一切使用せず「音楽の力」、「歌手の力」だけでテーマを達成できたことは紅白スタッフと歌手の一致団結があったから成し得たのだろう。今年も色々な事態に見回れた1年、どのような紅白になるのか見届ける価値はあるだろう※。

※決して「見ろ」と言っているのではないが、批判を呈し「見ない」と言うのなら、しっかりと「見て」NHKの問い合わせで批判をすれば良いと感じる。

 

 

 

 【番外編】紅白をより内容の濃い番組にするには

 今年の年末に放送されている民放の大型音楽番組は12月18日時点の視聴率データで昨年より減少して2桁を割っている。そこには上で書いたことも関係しているかもしれない。上と関係した筆者の考えだが、「区切りをつける」と言うことが必要だったように思える。

 それは右において、各番組「マンネリ」が多いように思える。「マンネリ」が悪いわけではないが、挑戦もしてもらいたいものだ。その観点から言うと「企画」を強化することが必要だ。他がやっていない企画を行うことで注目を浴びるだろう。この点では今年の紅白に言うことはないだろう。

 民放が大型音楽番組で失敗している中、レギュラー放送で微弱に視聴率を上げた音楽番組である「うたコン」では、生演奏に力を入れている。紅白も当初のコンセプトは「生演奏・生放送・生歌唱」、紅白ファンが言うところの「3生」だった。現在は打ち込みやバンド編成の歌手も増えたため、ビックバンドの生演奏で行われることが少なくなった。しかし、原点回帰で生演奏で行うとインパクトがあってよいだろう。全編ができないにしても「企画」だけや、一部分だけなど工夫を凝らして復活させてもらいたいものだ。このような部分で、音楽ファンなら知る大物バンドマンを起用するとより贅沢な番組となるだろう。

 また、アイドルやダンスボーカルグループが踊らず、スタンドマイク(マニアックになるがマイクはC-800G/9X)で歌唱力を見せるパフォーマンスを行ったり、6月6日放送の「うたコン」でのスライディングステージの有効活用のようなNHKホールの舞台を存分に利用した演出を行ったりとテレビを見ている人を圧倒させる演出を行うことでより魅力的な歌唱シーンとなるだろう。