春よ、来い/松任谷由実
多くの歌手の楽曲には、季節を感じさせる曲が数多く存在する。だが、それが必ずしも季節だけを問うたものではない時もある。今回紹介する曲を制作した歌手は時代の移り変わりで捉え方が変わった曲も多数ある。その話は以前、ブロブ記事とした。そちらと合わせて今回のブログ記事を読むのも良いだろう。
↓↓以前のブログ記事↓↓
春よ、来い/作詞・曲:松任谷由実 編曲:松任谷正隆
色々な”春”
この曲は、平成6年から7年にかけて放送された連続テレビ小説「春よ、来い」の主題歌として制作された。このドラマ自体は「女の一生」の物語。さらに、ドラマはNHK放送開始70年記念として放送された。当時は、このドラマに多くの意味がつけられていたように推測される。
このように、多くの意味を持ったドラマの主題歌も多くの意味を持っている。そのために、”春”ではなく”秋”に紹介している。
君に預けし 我が心は
今でも返事を待っています
どれほど月日が流れても
ずっと ずっと待っています。
(歌詞より引用)
1コーラス目は、主に”春”という季節を歌っている。2コーラス目では”我(私)”の恋や謝辞などの相手との関係性に春が来るような気持ちを歌っている。大サビでは夢や憧れなどが見え隠れする歌詞であり、その春が来ることを願っている。
また、「春」について辞書で引いてみると、四季のほか、正月や「活気があって、勢いが盛んな時期」、青春期などがある。このように季節・入学や転勤などの新たな始まり・恋など多くの意味を体現する言葉が「春」であり、この曲なのである。
松任谷由実、本人もこの曲には季節以外の意味もあると明言している。
メロディーも多様
この曲は、音楽の教科書にも掲載されるほど歌詞の日本語が美しく、言わば「日本風」な曲のように思われることが多い。しかし、この曲には多くの要素が含まれた楽曲となっている。
プロデューサー松任谷正隆もこの曲に関して民族音楽のような要素もあると話している。日本に限らず、「民族」その土地に根付いている音楽の要素を入れることでより懐かしさや物悲しさが表現できているのだろう。
だからこそ、多くの人々が愛し、歌い継がれている楽曲になっているのだろう。
NHKが見出す”春”
上でも書いたように、この曲はNHKの連続テレビ小説から出来上がった。つまりNHKが依頼しなければ出来ていない曲だ。そんな曲に新たな意味をつけたのもNHKだ。
それが「(みんなの)春よ、来い」だ。これは2011年に起きた未曽有の災害「東日本大震災」のチャリティー企画としてユーミン×SONGS(NHK総合)のプロジェクトとして制作された。この楽曲では童謡「春よ来い」のフレーズがコーラスで使れ、多くの著名人やファン・視聴者の投稿などの歌声が合わさっている。
そして同年、第62回NHK紅白歌合戦に出場し「(みんなの)春よ、来い」を歌唱。多くの人々へ勇気や感動を与えた。これによって、災害や未曽有の事態からの脱出されることを「春が来る」として、「春よ、来い」が新たな意味が付け足された。
さらに、2020年新型コロナウイルスが大流行した際にもこの曲が多くの人へエールを与えた。NHKでは2022年春、「5夜連続生放送 春よ、来い!」を放送。コロナ禍や国際情勢の悪化による重苦しい暮らしへのエールと題し、放送の中ではコロナ禍でライブができなくなっているライブ関係者を応援するプロジェクトで松任谷由実と「春よ、来い」を歌唱した平原綾香が桜の前で歌唱した。
このように、多く意味を持ち、それが更新されていく曲が「春よ、来い」なのだ。
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