嘘発見機の話 | ミニ地球世界のプチ神様を目指して

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密閉水槽という閉鎖空間での実験。初めての方は、テーマから「バイオキューブ」の記事をご覧下さい。
40過ぎのキモカワ系男子・虫歯天使が前人未到の領域に挑戦する。→ In English
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今日は、虫歯天使が保育園の年中さんだったときの話です。


先生は、みんなにききたいことがあります、と言いました。それはつまりこういうことでした。


三日前にトモキくんの靴が失くなりました。先生はトモキくんと一緒に、一生懸命探したのですが見つかりませんでした。

先生は、ぼくたちの中の誰かが意地悪をして、トモキくんの靴をどこかに隠してしまったのだと思っているようなのです。


確かにそう思われるのも無理はありませんでした。トモキくんは泣き虫ですし、何か話しかけてもちぐはぐなことしか言いません。こういう人は意地悪をされやすいものです。

ぼくたちは皆、目をつむらされました。先生は言いました。薄目を開けたら怒ります。いいですか。靴を隠した人に言います。調べれば、誰が隠したのかは分かります。先生が調べ終わるまで、黙って隠していたら、とても怒ります。今、手を上げてくれれば怒りません。皆にもバレません。

ぼくは思いました。許したり許さなかったりするのは、靴を隠されたトモキくんです。先生ではありません。先生の言うことは傲慢で間抜けです。ぼくの薄目にも気づきません。結局、誰も手を上げなかったようで、先生は何も言いませんでした。


そして、お昼寝の時間、先生はこっそりぼくを連れ出したのでした。


先生はぼくを疑っていると考えられます。先生はきびきびとした歩き方で、ぼくを紙芝居がたくさんしまってある部屋に連れて行きました。薄暗いのですが、先生は明かりをつけようともしません。

一体どういうふうに攻めてくるのでしょうか。今後のためにも、ぼくはこの先生をとっちめてやろうと決心しました。これは、この先生の傲慢さを打ち砕く良い機会とも言えるでしょう。ぼくは何でもないように言いました。

「紙芝居をしてくれるのですか?」

先生はそれには答えず、ポケットから何かを取り出して、言いました。

「これは、嘘発発見機です」


それは変な物でした。説明も変な説明になります。普通の折り紙を半分に折ったような、長四角の折り紙があったとします。それを折って、真四角に切ったものを2枚用意します。緑と赤の折り紙です。内側を糊付けすると筒ができます。そこに、アイスの棒を差し込みます。嘘発見機はそうやってつくられたものに見えました。ぼくはそう言いました。

すると先生は言いました。

「確かにそうすれば、これとよく似た物が作れるでしょう。しかし、これは、外からは見えませんが、色々な仕掛けがある機械です。その仕掛けで嘘を発見できます」

ぼくは怒って言いました。

「機械で嘘が分かるなんてそれこそ絶対に嘘です。もしもこの世の中にそんな機械があったとしたら、誰にも嘘をつかせないために、世の中はそこら中、嘘発見機だらけになり、嘘からはじまる悪いことが無くなります。しかし、実際には、ぼくは今日初めて嘘発見機を見せられました。これは先生が嘘をついている証拠です」


先生はしばらく黙りました。トモキくん相手ならともかく、ぼくを相手にしてこんな下らない真似をしてくるなんて、この先生はどれだけ間抜けで傲慢なのでしょうか。靴が見つからないのは、この先生の探し方が悪いせいかもしれません。

先生はよく考えているようでした。呆れたことに、この人はまだぼくを口先で弄べると思っているのです。

そして先生はようやく口を開きました。

「この嘘発見機は、完璧ではありません。警察に行けば、完璧で、大きくて、とても痛い嘘発見機があります。しかし、完璧な嘘発見機はつくるのにとてもお金がかかるのです。あなたの言う通り、機械で嘘を発見することは簡単ではありません。しかし、人は嘘をつくとき、ほんの少し汗をかきます。胸がどきどきします。目が動きます。だから嘘は発見できるのです。今からあなたに質問をします。あなたがもし、嘘をついていたら、この嘘発見機で、はっきり分かるか、曖昧に分かるかのどちからになります。はっきり分かれば先生は、とても怒ります。もし、曖昧に分かれば、警察にある完璧で大きくてとても痛い嘘発見機を使うかもしれません」

先生は得意気にそう言い終わりました。

語るに落ちるとはこのことでしょう。ぼくはさっきまで、この先生を徹底的に懲らしめてやろうかと思っていましたが、なんだか可哀想になってきたので、ちょっとたしなめる程度で済ませてあげることにしました。ぼくは静かに言いました。

「人が嘘をつくときに汗をかいてしまうのは知っています。でもそれを、どうやってその紙工作で発見するのでしょうか。その紙工作が、どうなれば、はっきり分かり、どうなれば曖昧に分かるのですか? ぼくに質問をしても構いません。しかし、その後に、ぼくは先生に同じ質問をしようと思います。きっと紙工作は、同じ答を出すでしょうね。だからぼくも、とても怒ったり、先生を警察に連れて行くかも知れません。これはぼくの感想ですが、先生のように口が達者なことは決して悪いことではないと思います。しかしそれで、何もかも自分の思い通りにできると考えてはいけません。先生は、先生の先生からそう教わらなかったのですか?」


そしてぼくは泣かされました。


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