2016年厳選邦楽-僕の10枚くらい 後編 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
音楽ブログです。更新不定期。

はい。というわけで後編になります。

 

最近よく思うことがありまして、当たり前なんですが、音楽は素晴らしいけど、音楽だけでは人生は勿体ないです。そんなこと普通の人は理解できると思いますが、僕みたいに音楽くらいしか誇れる趣味がない、それ以外を見てこなかった人間は様々な経験を通して、今、やっと、理解したところなのです。

人と話さなくちゃいけないし(これが大事)、本を読んだり、映画を見たり、知らないお店に行ってみたり、新しいものに触れてみたり・・音楽で得た経験を他に反映できたり、逆も然り、全部つながっているんです。

 

そして、歳を取るたびに落ちていく感性を鍛えてあげないと死んでるも同然になります。感性が死んだら人間は終わりです。その鍛錬を怠った人間が、「最近の文化や音楽はつまらなくなった」などと戯言を言うのです。もし、そんな言葉を吐いた覚えがあるなら、それは危険信号です。

 

だから、色々と挑戦していく年にします。何が自分の骨となり、肉となるか、わかりませんが。

いくつになっても、笑われたって、今更遅いと言われても、僕は僕の知らない世界を見に行きたいんです。そしたら、また、音楽も違った輝きを見せてくれるような気がします。っていうのが最近考えてることです。ただの独り言です。

 

それではよろしくお願いします。

 

5.カラスは真っ白/バックトゥザフューチャー

アラサーの偏見かもしれないが、最近のバンドはセルフプロデュース能力や演奏力も高いが、自分たちの十八番や引き出しが少なく、動画サイトで一部ヒットするが、以降は姿を消していく、二番煎じに徹していく傾向が強いと僕は思っている。フレデ〇ッ〇とかそうだよね。

 

その点、このバンドの引き出しの多さにはちょっと驚いた。しかも、どの引き出しを開けても、その全部が力強い。少女系ボーカルにオサレサウンドが絡み合う構図はもはや見飽きていたが、キャッチーなJPOPをベースにしながら、ヒップホップ、ファンク、ジャズなどの要素をこれだけ色濃く出し、ちょうどいいグラデーションでキャンバスに乗せた上での成功例って若手の中では、稀なんじゃないかなと。

 

 

80,90,00年代、そして現在を行き来するような・・まさにタイムマシンさながらの振り幅。それをたった309曲のアルバムで一筆書きみたいに描いてるもんだから、「やべぇのが着ちまったなこれは」と騒いでいた。アルバムの収録時間に対する、構成や流れという観点で見れば、間違いなく161位の作品と言っても過言ではない(間髪入れずに始まる2曲目の繋ぎとかほんますき)。が、残念ながら3月で解散してしまうそう・・本当に残念。全然これからのバンドなのに。

 

「もう終わるバンドなら聞かなくていいか」と考えているそこのあなた、逆に聞いてください。こんなトントン拍子で進む気持ちいいアルバムは5年に1枚くらいなので。そして「カラスは真っ白・・あのアルバムはよかった・・」と語りついであげてください。

 

 

 

 

4.ストレイテナー/COLD DISC

無敵。

 

ストレイテナーは非常に優秀なバンドだ。ロックも、ダンスミュージックもポップスも、バラードも優秀に奏でられる。そして、すべてのプレイヤーがトップレベルの技術を持ち、それがバンドとして合わさった時に常識では考えられないほどのアドレナリンが放出される。

そういう意味では音源も素晴らしいが、ライブありきのバンドであることが大前提であった。その意味では、一番好きなロックバンドであった。ハッキリ言えば、歌詞は二の次だったし、一貫性のあるメッセージやそれを反映した作品はほとんどこれまでなかった。

 

振り返れば、OJが加入したのがもう2009年のことになる。セルフカバー盤『STOUT』により、確固たる四重奏を構築したのが2011年。翌年、そこで得た激情を高めるより、自分たちの楽曲の美しさとグッドメロディを再発見するために二枚目のセルフカバー盤『SOFT』(全編アコースティック)をリリース。そして結実した強さと優しさを武器に、全力で戦い、数々の名曲を世に送り出してきたストレイテナー。

そんな彼らが今作で放ったのはあまりに日常的、普遍的なメッセージであった。

 

 

「や、その手の作品はよくあるやん?なんでもない日々を大事にしよう的なやつやろ?」と思うかもしれないが次元が違う。それはロックバンドではおそらくミスターチルドレンが唯一、表現を可能にしていた領域の音楽に近いと僕は感じた。一歩間違えれば、軟弱なポップスや三流の説得力しか持たないロックナンバーに陥る。だが、彼らはそれを成立させるだけの過程を歩み、経験を積み重ねてきた。

 

前作のツアーで披露された”Melodic Storm”を聞いた時から予兆はあった。何度も何度も聞いてきたナンバーなのに、その日は何故か質感が違ったのだ。それは定番キラーチューンとしてではなく、まさに”イノセントワールド”のように、いつの日もこの胸に流れてるメロディとして、僕の体に染みこんでいった。

 

 

レコード、テープ、CDMD、そしてデジタルへ、加速する時間と時代の波。そんな変化の中で歌われることのなかった永遠への願い、続いていく命と意志を堂々と彼らは叫んだ。それは目を疑うほど美しいロックンロールだった。

 

「もしも僕が君だったら」と考えずにはいられなくなったあの日から、失われた僕という名前を求め、淡々と日々は続き、繋がっていった。「過ちは繰り返さない」と再び願いながら、全てが失われた地にたどり着き、再び、勝ち目のない戦いに僕らは挑む。全ては新しく名前を付けた船で君を迎えに行くために。目指すのは誰にもない、誰にでもある明日だ。

 

僕はアルバムを聞きながら、ストレイテナーを聞いて、ライブ以外でおそらく初めて涙した。涙の跡が歌詞カードに残ってしまった。大げさだが、生まれてから今まで、この地球の歴史を考えてしまった。

 

ライブでアガるだけのバンドなんて腐るほどいる。曲がかっこいいだけのバンドも腐るほどいる。彼らはもはやそれだけの存在ではない。ストレイテナーは本当の意味で最強のロックバンドの称号を手に入れたと断言できる。

 

 

 

 

 

3.B-DASH/EXPLOSION

僕たちは変わり続ける。本当の自分なんてわからなくなる。自分の意見を曲げてでも、時に人と抱き合いたい、勝ちあがりたいと思う。それはきっと普通のことだ。正直に生きたら報われるわけじゃない。作り笑いを浮かべ、計算高く生きていかないと死ぬ。

 

だからこそ変わらないこと、貫き通す意志を見て、僕は感動した。それは言語を超えて、音楽として目の前に現れる形なき意志。だからそこに意味はなくてもいい。彼らの歌詞には基本的には意味はない。ただ響きの良い"めちゃくちゃ語"を当てはめるだけ。だけど、はじめて洋楽を聞いた日のことを思い出してみて欲しい。かっこいい、なんかやれそうな気がする・・そういう気持ちって大事だ。

 

“ちょ”や”ハーコー”のキャッチーさにやられたあの日から好きだったし、日本語詞に傾いた名盤『NEW HORIZON』だけでも彼らの存在は僕の中で非常に大きいものだったが過去の栄光となりつつあった。それがこの作品で変わった。

 

 

現在進行形でかっこいい。メロディメーカーとしての才能はさらに進化し、粗削りな質感を残しつつ、垢ぬけた音に生まれ変わった。全曲メロディアス、ハッピー、最ッ高にブチあがる。言葉にしなくとも伝わる。精神が落ちたとき、どんな言葉も届かなくなる。だけどこの音は届く。そんな時、僕は彼らの音楽に手を伸ばす。昨年、何度もこの作品に救われた。きっとこれからも。

 

流行りのJPOPも無視できないし、ロキノン系の若手もアイドルも声優も、なんかもっと視野の外も見なきゃいけないけど、昔からやってる彼らみたいなバンドが今再びピークを迎えている事実にもどうか目を向けてほしい。そんなことを正月あたりに書いていたら、先日、解散してしまった。ワンマンを一度は見に行くべきだった。後悔。気づくのが遅かった。ごめんな。

 

でも俺は受け取ったよ。ありがとうB-DASH。

 

 

 

 

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2.[ALEXANDROS]/EXIST!

 

僕達は主張する、僕達の権利を自由を。現状に満足できない。

ロックンロールとは反骨精神そのものだ。そして反骨精神がなければ人間は死ぬ。だから僕らみたいな人間は生きる為にロックを聴かなくちゃだめだ。


僕は久々にロックンロールが持つ夢を信じたくなった。そして、川上洋平は本気で大マジで世界のてっぺんを取りに行く気満々だ。好きなバンドも好きな歌もたくさんあるし、有望な新人もたくさん出てくる。音楽は豊かになった。だけど、なんていうか・・・こういう気持ちは久々だった。


僕はもう一度ロックンロールに夢を見てもいいと思った。それだけの作品を彼らは作り上げた

 

 

前作も素晴らしかったし、今作は楽曲のクオリティが、飛躍的に進化しているのは事実だが、それより何より川上洋平の精神性がついに楽曲に追いつき、いや、追い越したと僕は感じた。

もともとイギリスの某フェスのヘッドライナーを務めることを目標にするなど、言うことはデカイバンドだったが、まるでUVERworldの歌詞のような成り上がり論まで飛び出してきた。彼に一体何が起こっているのか。

 

俺たちはポップソングを作ることもできる ワタリドリみたいな

-そろそろ先を急ぐぜ 遅れる奴を待つつもりはない クソッタレな奴は(クソッタレな貴様らへ)

 

ワタリドリという翼を得てからのは彼らは絶好調であった。認知度も高まった。もともと器用で幅広かった楽曲センスにも、さらに磨きがかかった。夏フェスに出れば満員だし、テレビに出ても今や人気バンドだ。それを利用すればもっともっと有名人に、あるいは使い勝手の良いロキノンバンドになることもできた。愛を歌うそぶりを見せれば、大衆を騙すことも簡単であった。

だが彼らはその道を選ばなかった。ワタリドリにしか興味がないクソッタレと馴れ合うつもりはさらさらなかった。もっともっと上を目指しているから。

 

アルバムで描かれたのは磨き上げたセンスと信じたことをなりふり構わず好き勝手に、クソッタレ共は無視して、時代をリードする姿。昔の無鉄砲なロックスターみたいだ。けどバカじゃない。転ばぬ先の杖を投げ捨て、立ち止まる暇もなく動き出し、ブチ上がり続ける。転んだときは苔が生えないように転がり続け、また這い上がり、こう歌う。

 

「叶いそうもない夢はもう見るな」と 僕は眠らされた

それでもきっと夜には目が覚め 追いかけてしまうだろう

-Hello Hello Hello NEW WALL(NEW WALL)

 

 

やっべマジでかっけぇ・・・生き様憧れるわリスペクトできる。ストリングスを大胆に使えるロックバンドはつよい。次々、表れる壁さえも自らを高める材料として、受け入れられる。人生そうだよね・・わかる。それな・・・良さみ深い。わかる。なんかもう語彙力が落ちてきたやばい。良すぎて語彙力落ちてきた。や、これマジでやばいから。これ聞かないで「最近のロックはダメ」とか言ってるおじさんと話したくない絶対。かっこいい音、憧れられる生き様、これがロックンロール!最高!みたいになった。

 

そして、今まで泣いた分を取り戻すために、あの月を目指し、成り上がる。それはずっと不在だったロックスターという存在。空席の違和感を彼らは埋めてしまった。

実際、先日の年末フェスで見た彼らは過去最高に良かった。大きなステージが似合うバンドになった。例えばラルクとかミッシェルガンエレファントとかイエモンとか、ステージに上がった瞬間に会場の空気が一変するような、ある種の緊張感さえ漂った。

ロックンロールの神様は今、川上洋平に微笑んでいると僕は確信した。

 

と思ってたら届けられた最新シングルがまた素晴らしくて震えている。

 

 

どこのラルクだよ・・・マジでいくつ曲の引き出しあるの?しかもアレンジも本人たちがしてるんだろまた?頭おかしい・・・これからもうずっとずっと目が離せないバンドになると思う。

ロックの未来は明るい。

 

 

 

1.RADWIMPS/君の名は

仕事への期待と不安、資格への挑戦、好きな声優のこと、友達のこと、未来を考えながら、工場街の光を見つめながら、このアルバムを聞いていた夜勤の帰り道。きっとどんな困難も乗り越えられるし、なりたかった自分になれると信じられた。自分を初めて信じられる年になった。

 

『君の名は』という作品、それを盛り上げるRADWIMPSの音楽は僕にとって革命的だった。

 

 

16年上半期の僕は失ったものを数えながら、繰り返し、自己否定を、どうしようもない自分を肯定した。転職を繰り返し、ついにコネで入った会社の中で息が詰まりそうな空気を嫌々吸いながら、死んでいく途中であった。変われない自分を恨んだ。

 

夏、もう一度、最後の誓いを立て、僕はなりたい自分を肯定してあげた。そしてこの作品に出会った。不安だったけどちゃんと未来に繋がってくれた。2016年、すべてはこの時のためにあったんだと思えた。それと、四谷にて聖地巡礼をした朝、かわいらしい女子大生にも出会えた。最高だよ。ありがとう新海誠、ありがとうRADWIMPS

 

人間開花も良かったけど、やっぱりこっちだ。映画にも使用された数々のインストゥルメンタルでは新しい彼らの魅力にも気づけたが、歌モノ4曲(なんでもないや別verも含めると5曲)の完成度が素晴らしい。並べればたった24分。しかしその中には起、承、転、結しか存在せず、溢れ出しそうな今、壮大な過去、未来にてまだ見ぬ君を求めるストーリーが凝縮されている。きっと映画がなくても、僕はこの作品を愛せた自信がある。

 

RADWIMPSの音楽は多感な青春時代とその未来に響くメッセージを数多く持ち合わせているし、エンタメ性に富んでいる。あらゆる音楽を混ぜ合わせ、極上のミクスチャーロックとしてそれは表現されてきた。気持ち悪いほど君に依存した愛やアップテンポな楽曲がどうしても取り上げられがちだが、芯はまっすぐに「君に会いたい」だけのバンドだと僕は思っている。

 

そして、”セカイ”の中で君しか見えなかった少年たちはその意志を”世界”に届けた。その「君に会いたい」が宇宙規模で突き抜け、今年一番の高揚感を僕に与えた。「君が好きだ」、「君に会いたい」という強い感情、この世界ではこれに敵う武器はなく、君以外の武器は他にはいらないのだ。

 

 

RADWIMPSを最初に聞いたのは確かラジオから流れた"愛し"という楽曲。まっすぐな眼差しのような歌声と型にハマらない無茶苦茶な歌やラップの展開、正直でエグイ歌詞、雑食な音楽が混じり合った-全く新しい音楽体験だったのを覚えている。高校か大学のころだ、狂ったように聞いたし、周りも聞きまくっていた。

 

だが、その認知度は若者の間にとどまっていた。少し上の世代になると誰も知らない。よく類似していると言われるバンプの場合は天体観測のヒットや初音ミクとのコラボやタイアップを経て、今があるわけだが、彼らの場合はそんな機会にも恵まれなかった。それが悔しかった。別に自分が好きならそれでいいのだが、もっともっとたくさんの人に聞いてほしかった。そんな時代が来ればいいなと思っていた。そんな時代が来れば、時代は変わると僕は確信していた。無理だと思っていた。

 

だけど夢は叶った。それは大げさに言えば、邦楽ロックをあのころ愛した、今もその熱を冷ませない僕ら全体の希望が届いたということだ。勝手にそんな気がした。大ファンじゃないし、離れていた時期もあったけどそう思ったのだ。

新海誠の場合もそうだ。才能はあるし、アニメファンには評価されていたが、ひとつの時代にその名を残すまでじゃなかった。ジブリじゃない、所謂深夜アニメのノリ、こういったものが届く時代は来ないと僕は思っていた。アニメはもはや二次元オタクと子供だけの為のものではなくなった。

 

夢は叶う。そんな彼らを見ていたら、背中を押された。凡人である僕らと天才たちを同列で考えても仕方ないのはわかる。だけど、僕の心は突き動かされた。感謝しかない。2016年はなんて素晴らしいんだろう。僕らは最高の時代に生きている。

 

夢と現実に境界はなく、出会うべき君に出会うために、見るべき景色を見るために僕らは生きている。それを運命だと信じてやまない。勘違いでもいい。ちゃんと上を見て、信じたやつだけが見られる景色に行こう。馬鹿にされたっていい。運命に変えてやる。そんなロマンスを現実のものにできる希望のひとつが音楽である。

 

もう一度、もう一度だけ夢を、なりたかった自分を、僕らは、時代は求めていく。

 

 

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以上です。

 

様々な優れた音楽が時代や、僕の毎日と強くシンクロしてくれました。2016年もたくさんの音楽に感謝します。

 

いつもなんですが、僕はあまり専門的な音楽知識もないし、そういったことは書けません。ただただ、音楽を利用して自分語りをしてしまいます。だって音楽は僕の生活に寄り添いすぎて、それが人生とリンクしないなんてあり得ないので無視できません。私情や感情論を取り除いたレビューなんて書けないんです。じゃあ100%ぶち込んでやろうと思います。

 

今、僕は29歳です。その昔、描いた理想像からはある意味ではかけ離れ、ある意味では近づいています。人間は簡単には変われません。だけど、"なりたかった自分"、そして"見たかった景色"、この二つとの向き合い方は変えることができます。僕らはきっと夢破れた、大人にもなれないガキです。だけど、夢ってそもそも「こんな人間になりたい」って目標だったと思うんです。だから、そこだけは、いつかの自分とした約束は破らないでおこうって・・そう思うんです。スガシカオが歌の中でそんなこと言ってたので受け売りですが。

 

自分が成功しただなんてまだ思いません。全然普通の人間になれません。失敗ばかりです。ただ、今この瞬間に人生や未来を諦めようとしている人がいたら、音楽を聞いて、考え直してほしい。そこで得たエネルギーを音楽以外にも還元してあげてください。そんなエネルギーに満ちた、自分の好きな音楽を探せたら、もっと毎日は輝きます。

なかなかすぐに人間は変われないけど、僕はやっぱり諦めずにやってきてよかったと今は言えます。人生は楽しいし、生きてるなら楽しまなきゃだめです。

 

というわけで、また適当にブログを更新した時にお会いしましょう。ありがとうございました。