久々の更新になります。つまり、「2016年良かったアルバムを紹介するよ」ってやつです。
というか定期的に更新していくメンタルを取り戻せない(短い内容でも日々ブログを続けているすべての人にリスペクトしかない)。人の興味、打ち込みたいってことってのは変わっていきます。音楽だけを聞いていたら勿体ない気もしてきました。時間が足りません。色々やりたいです。だがしかし、それでもこの記事だけは書こうと思っていました。おそらく5年くらい前から媒体を変えながら、続けているこの企画。時間はかかりましたが、満足できるものが書けました。やっぱりこれを書き上げないと僕の2016年は終わらないと確信していたので、やっと2017年を生きられそうです。
さて、2016年、音楽は再び、時代を映し出す鏡として機能したと僕は思っている。
君の名は、シンゴジラなどなど数々の優れた作品が世の中を照らし出してくれた。それはまるで人々の希望や絶望を集約し、なおも燃え盛るひとつの灯のように、力強く。細分化されていく文化、コンテンツの流れが続いていく中で皆がひとつのもに熱狂する姿に僕の胸も熱くなった。そんな数々の映像作品に寄りそうように・・いや、それよりも前に一歩出るように、そこには確かに優れた音楽があった。
2016年を振り返って、「記憶に残るヒット曲がなかった」なんて言ってる人はもう相手にしなくていい。これほど音楽が豊かな時代に適当なことを言わないでほしい。思考の停止した、過去しか見らない人間なんか置いて、僕らは新しい時代を進まなきゃダメだ。
RADWIMPSの大大大成功、スターへの階段を駆け上がった星野源、PPAP、RADIO FISHのヒットや宇多田ヒカルのアルバムを求め、レジに相変わらず長蛇の列を作る国民たち、SMAPの終焉に振り回される僕たちはどうしたって音楽から逃れられない。
CDの価値は下がり続け、オリコンなど誰も見向きもせず、握手券が百万枚さばかれ、大震災が起こり、僕らは繋がりあうことを求め、全ての日常を疑い始め、音楽は現場主義の上で成立し、恋するフォーチュンクッキーが鳴り響き、オリンピックが決まり、不倫を繰り返し、未だ見ぬ君の名を求め、僕は握手券付CDを何の疑いもなく購入し、声優のリリースイベントに足を運び-それでも僕たちは、表現者たちは、音楽はそれぞれの意味を自問自答し続けた。
そして今、「音楽は史上最高に自由な時代を獲得した」。オリコンも関係ないし、CDという形にとらわれる必要もない。音楽をCDとして残すのではなく、文化として、希望として、残す努力をした。それにジャンルの枠を超えて、僕らはネットを介して好きな時に好きな音楽を聴くことができるのだ。目の前にはもう壁なんかない。
もう一度言おう。音楽は時代を映し出す鏡である。
昔からずっとそうだった。けど2016年はちょっと違う。それは埃を払い落とし、磨き上げたキレイな鏡かもしれない。あるいは、長い間、先代が大事にしてきた鏡をぶち壊した先に僕らがやっと築き上げた新しい輝きなのかもしれない。とにかく時代が確実に変わる空気をひしひしと今、僕は感じている。
そして音楽は夢そのものである。叶わないと思ったあの夢は叶うかもしれない。それが無理でもあの日夢見たなりたい自分にはなれるかもしれない。いや、なれる。新しい時代を作るのは新しい音楽と僕らである。未来だけを見つめろ。
そう思わせてくれる素晴らしき音楽たちを今年も厳選しました。前置きめっちゃ長くなった・・・それではよろしくお願いします。
13.YEN TOWN BAND/diverse journey
親友か恋人のように連れ添ってきたミスチルと離れ、最近ではバックナンバーをおもちゃにしている小林武史だが、正直、惚れ直した。
地中から這い上がってくる生命力のような、官能的なものさえ感じさせるアレンジ。甘ったるくも勇ましいボーカル、楽器、空気感を生かす、それらに寄り添うための曲作りを熟知している。さすが時代をリードしてきたプロデューサー(当たり前)・・・そういえばスガシカオのTHE LASTも手掛けてます。どちらも素晴らしい仕事ぶりでした。
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diverse journey(初回限定盤)(DVD付)
4,536円
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12.スガシカオ/THE LAST
つまり最高傑作、そう名付けるのは簡単だが、実際これは彼の最高傑作に違いないと僕は感じた。初めてスガシカオを聞いた時の気持ち悪さ、えげつなさ、ほんの少しだけの希望が真っ赤な血のようにドロドロと流れ出した。血は音にも歌詞にも染みこみ、紛れもないスガシカオにしか歌えない歌を作り上げた。
夜空ノムコウで脚光を浴び、それでも以降は順調な活動を続けてきたわけではない。だからこそ、今だからこそ歌える歌があふれている。ひとりの人間の本気を、這い上がる姿を音楽を通して、目の当たりにした。kokua(スガシカオがやってるバンドでNHK”プロフェッショナル”の曲とかやってる)のこの曲も含めて、大きな勇気を頂きました。本当にかっこいい大人の代表です。
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THE LAST (初回限定盤 CD+特典CD)
4,104円
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11.西野カナ/Just LOVE
きっとJPOPは、音楽は、それ自身が持つ力は永久的に変わらないだろう。西野カナは何故売れるのか?頭の足りない女子大勢が好き好んで買ってるからか?違う。アルバムを聞いて僕は分かった。いきものがかりもそうだけど、気持ちいいほどにJPOPど真ん中だからだ。そして、ずっと聞いていると何故かこの特徴のないボーカルに安心感を覚える。きっと楽曲を邪魔しないちょうどいい声なのだ。
飾らない女の子の主張、普遍的で飾らない歌をいつの時代も誰かが歌い継いでいかなくてはいけない。その役目を2016年、彼女はきっちり果たした。
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Just LOVE
3,100円
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10.岡村靖幸/幸福
ああ・・・岡村ちゃん・・・おめでとう。ついに完全復活。
取り返しのつかない失敗を何度も繰り返し、仏の顔も三度目くらいで復活を果たした岡村靖幸。精力的なライブ活動、キラーチューン連発のシングルリリース・・「アルバムはまだかまだか」と待ち続けた。そして・・・念願の、待望の、夢にまで見たオリジナルアルバムは半分以上が既発曲な上に全9曲、お値段3000円越え。おまけにレンタルもやってない。客を舐めてるとしか思えない。ブチぎれそうな神経で再生ボタンを押した。
瞬間、頭がぶっ飛ぶ。
「なんだこの1曲目は・・・もうこれだけで30000円くらい出せる」と僕は思った。悔しい。
どうして僕らはこんなにも彼の音楽に今もなお魅了されるのだろう。
答えは簡単、他に代えが効かないのだ。他では買えない興奮、高揚感、こいつに値段はつけられない。
既発曲とか関係ない。並べて聞けば、最高のヒット曲メドレーみたいに僕の体に染みついて離れない。岡村靖幸が持ち合わせていたJPOP性、プリンスなどへの憧れ、そして切っても切り離せない変態性が過去最高のピークを今迎えてるんじゃないかって僕は思う。昨年くらいから個人的に気になっている”低音の重要性”という点で聞いてもビシバシ決まる。最高に踊れて泣ける。こんな日が来るのを僕は信じてたよ。おかえり。
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幸福
3,300円
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9.きのこ帝国/愛のゆくえ
優しく、切なく歪んだギターが騒音のように鳴り響く1曲目でいきなり胸が締め付けられた。そのまま愛の洪水が押し寄せ、嵐が起こり、渦になる。「復讐から始まって終わりはいったいなんだろう」と歌っていた少女はその行く先を未だに見つけられず、だがしかし一つの答えにたどり着いた。
アルバムはアップテンポな曲は一切なし、終末感の中で失われた楽園を求め彷徨うような5曲目の南国ムードも新境地的でおもしろいが、淡々と続く日常を、愛を切り取るよりかは優しく手ですくうように音楽が続いていく印象だ。それが愛おしい。悲しくはない、切なさもない、ただこうして繰り返されてきたことが愛おしい。
そして最高の誉め言葉として、およそ僕が持ちうる言葉では言い表せないくらい好きだ。やっぱり僕はこの中性的で儚いボーカルと初期スーパーカーを彷彿とさせるバンドサウンドの相性が最高に好きだ。きっちり、アルバムを経るたびに、変わっている。だけど好きだ。言葉では言い表せないくらい、絶妙にツボをついてくる。ここ5年聞いてきた中で一番好きな音が鳴り響いている。
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愛のゆくえ(初回限定盤)(DVD付)
3,996円
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8.GRAPEVINE/BABEL, BABEL
神、神が見えた。4曲目で意識がぶっ飛んだ後に泣いた。
ここ最近の彼らと言えば、本気のうちの80%くらいの力でさらっと作品を作っていくような印象だった。腹八分目がちょうどいいし、酒も飲みすぎてはいけない、そんな感じだった。だけど「もっともっと開いて欲しいし、キャッチーであってほしいし、イケるんじゃねぇか」って期待は常にあって、予兆も何度もあったけど、時代とかきっと色んな事が重なって、ついに120%にまで仕上がった。
ロキノン、JPOP、SNS以降の特殊かつ局地的な熱狂、そういった界隈とは関係なく我が道を突き進んできた彼らはついに悟りを開いた。そのうえ、ロックンロールのすべてが凝縮、というよりかはゆとりを持ってパッキングされており、通して聞きやすい。変態的、普遍的、裏の裏を表として差し出すような力強いまっすぐさ、これはGRAPEVINE入門編として10代のリスナーにもおすすめできる作品である。
さらに特筆すべきは田中の書く歌詞、まわりくどい表現や意味の有無が定かではない単語を並べた難解な段落が多いのは変わらないが、永遠を捨て、未来の一瞬を求めていくような強い意志がフィルタリングされている。
どうか急いで どうか終わらないで 思い出になってどうなるの
これが本当なら それはわかっているさ 目が覚めれば痛いのも
このアルバムを象徴する歌詞だと僕は思う。キラキラした思い出はきれいだけどそれだけでは生きていけない。永遠の上で君と過ごしたいけど、それは砂の城だったと気づく。未来の想定外に対して前時代の想定内で向かい合ってはいけない。
派手さなんかなくても、無駄にダンサブルじゃなくても、サークルなんか作らなくても、何気ないサビをちゃんとずっと繰り返していく。そんな日常の延長線をいつか、あの点に繋げる。彼らの音楽を聴ききながら、そんなことを考えたのは初めてだった。僕らは、時代は、もう一度、光について考え 、夢見た一瞬を現実のものにするため、前に進むしかない。
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BABEL, BABEL (初回限定盤)
4,320円
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7.ゲスの極み乙女。/両成敗
まず一周、聞いて鳥肌が立った。上半期の段階ではダントツで1位の作品であった。自らの失態さえも音楽に利用し、アルバム一枚を使って、 『私以外私じゃないの』という理論に美しく帰結させ、誰でもない自分というアイデンティティを確立させる手法。計算なのか偶然なのか、僕は川谷絵音という男が恐ろしくなった。
全ての人間は罪を背負いながら歩き続け、イエスの言うところによれば、誰にも石を投げられない。だからこそ、現代人の一部は頭が狂ってるとしか僕には思えない。人の不倫とか失敗が大好物で、揚げ足取りと批判を延々に続け、”イエス”か”ノー”と”いいね”でしか会話ができない。
本作を聞けば、全てを理解できるのに、誰も彼もワイドショーとネットの上辺だけを舐めまわし、唾を吐き散らし、川谷絵音の本質を咀嚼しようとはしない。このアルバムはその類の人間に気持ちよくナイフを突き刺してくれる。
彼らが表現したのはきっと、悲しくって泣けるなんてものより、棘を取った優しさなんてものより、ずっとずっと美しい音楽だ。それを僕は信じたい。それがどんなに下品で人間性が最低でも、僕は世間に何と言われようと・・この名盤だけは高く評価する。
川谷絵音、おまえはこんなところで終わる才能じゃない・・・おまえみたいな最低な人間が成功できるのは音楽しかない。おまえには音楽しかない。何年かかっても、何を言われても、必ず帰ってきてくれ。
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両成敗(初回生産限定盤)
3,780円
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6.LADY FLASH/恋するビルマーレイ
関西を中心に活動する男女ツインボーカルのインディポップバンドの1stアルバム。ジャケットの意味不明さが気になって、某レンタル店で借りてきたら、めちゃくちゃ才能溢れる新人だった。
すっごく気持ちいい。明確なメッセージがあるわけでもないし、どんなバンドなのかも掴めない。そんなことうだうだ考えるのもやめちまって、「ああ・・・好き」って思える音。頭空っぽにして、平日でも休日でも気取らずフィットするワードローブ的、軽くて疲れない雰囲気。子供にクレヨンを渡して画用紙に書かせたみたいな自由さ。収録時間23分があっという間にすぎる。イヤホンで聞いたままポカポカ陽気の世界を散歩したくなる。ツインボーカルなんだけど、特に男の声がいい。永遠の反抗期、少年性、イノセント・・そういった声が僕はやっぱり好きなんだなと思った。
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恋するビルマーレイ
2,376円
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以上が前編:13~6位となります。なんか中途半端な数になったんですが、本当に2016年は優秀な作品が多く、書きたい作品が多かったんです。一応ランキング形式にしていますが、どれも同じくらい大事な作品になっています。中でも、文学性の高さというか、恐ろしさで言えばやはりゲス・・それさえも超えた圧倒的な気持ちよさがLADY FLASHでした。
昨年は以前よりたくさんの新譜を聞きました。少しでも興味のあるもの、ツタヤで手に取ったジャケットがおもしろいもの・・残してたメモによると66枚のアルバムを聞いています。ちょっと個人的には聞きすぎたかな・・というかひとつ、ひとつの作品を噛みしめる時間が短くなってしまった気がします。だけど得るものは大きかったです。今年は今のところマイペースに新作を、それよりも過去の作品を聞き返す時間を取っています。死ぬまでにあとどれだけの新しい音楽に出会えるか、過去の名盤を再び理解できるか。貪欲に、ひとつひとつをきちんと味わいたいですね。
では、そんな感じで明日は後編をよろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございました。