Yogee New Waves『Paraiso』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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ー楽園は見えたかいー

僕たちの楽園は何処にあるのだろう。その答えを出せないまま、日々は過ぎ去っていく。Yogee New Wavesはその答えを持たないままに、すんなりとAnswerを提示する。『Paraiso』はそんな作品だ。

懐かしく響く日本のポップミュージック、特に70年代の色彩を何のフィルターも通さず、恐ろしく透明感のある形で今の2010年代に出現させる辺りは、畏怖の念さえ抱いてしまう。

何故こんなマジックが起こっているのか。今の彼らから考えられるのは、まず、ボーカル&ギター角館健悟のボイスが持つ周波数と過去の風景との親和性が高いため、簡単にそれらをリンクさせてしまい、結果的に懐かしさを感じる。彼の声がそのカラクリを作り出しているのだ。それに共鳴するように、井上直紀のベースは、激しい波風を立てない形で絶妙にリズムをつないでいく。例えるなら水の表面を一定の間隔で描かれる波紋のような美しさがある。これらが、このバンドの特異性を作り出していると思う。

先に懐かしさといったが、それだけではない。作品冒頭から「Megumi no Amen」「Summer」「Climax Night」は日本のポップが海外の音楽を正しく消化して、表現していった70年代初期から後期を彷彿させる。

ただ過去を繰り返したい訳ではないことは明らかだ。「Hello Ethiopia」や「Earth」からは現代の社会情勢、戦争に対して、表現者としての思いを曲に投影していることからも、言うまでもなく、このバンドが現在進行形であることが伺える。

さらに、「Listen」「Dreamin'Boy」からは、彼らのパンク、そしてロックへの純粋な思いが感じられる。
”どぶにまみれた 子どもの賛美歌を聞けよ”という歌詞からは、80年代末期から90年代へ引き継がれている精神性も受け継ごうという、ロックバンドとしての力強ささえ見えた。

この作品に楽園のありかは記載さるていないが、見つけられそな気がしてならない。そんな可能性がふつふつと沸いている。彼らには、まだ秘めたパワーが内在してると思う。まず、角館健悟のボーカルはこれから色んな意味で化ける気がしてならない。凄くこわいバンドだ。






PARAISO/bayon production / hmc

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