GRAPEVINE『Burning tree』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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先行シングルの『Empty song』のロックなテンションの高さは、移籍レーベルに向けた手土産のようなものだったとも言える。しかし、アルバム全体はこれとは真逆の風が吹いている。ともすれば内省的な作品と捉えることもできるが、亀井亨が生んだ異常に美しい旋律が細部まで行き渡ることで、狂気すら感じる高揚感が漂う。筆者が考えるバイン史上最もメロディアスな、サード・アルバム『Here』にも通ずる。

今作で特に感じるのは、死や終わりというキーワードが端々に散りばめられ、それがバンドと常に寄り添っていたブルースに見事に溶け込んでいることだ。歌詞が田中和将のパーソナルな視点から綴られていることだとしたら、彼の中にある一つのゴールや終着点を見据えてのラスト・スパート的な作品なのだろう。それが、このバンドにとっては驚きの事実でもある。なぜなら彼は、常に地続きでやってきたと公言するほど何がしかの到達点や完成型に見向きもぜず歩んできたからだ。そんなバインも遂にこの地点まで来てしまったということか。

でも悲しむことはない、これはまだそのスタートに過ぎない。今の彼らの曲は、これから育まれる子供たちを包み込む大きな木のようだとも言えるが、それ自体を焼き払える程の狂気は内に秘めたままだというのも事実。

さぁ、またブルースは鳴り始めた_ _ _
まずは《あの夏と》「IPA」《あの夏を》「here」から、昔語りを始めようじゃないか。あなた達はまだ《偽ブルースは成功しそう》「ナポリを見て死ね」っていうんかい?