少なくとも、2014年の音楽シーンの中で、この『1989』は必聴だと、そう言ってしまうくらい最高のポップ・ミュージックだ。テイラーはこのアルバムで時代のアイコンを簡単に刷新してしまったと思う。でも、僕自身わからない、何故こんなに良いのかが。でも聴いてしまうのだ、それもアルバムをトータルで聴かせてしまう位に。アルバム冒頭から感じるのは、’80sのポップ感なのだが、それが古典ではなく、コンテンポラリーな曲として、違和感のなく響いてくる。彼女自身が語っているように、今作はギターよりも、シンセやドラム・マシーンを主体にサウンド・メイキングしている。それが、ポップの黄金期感を楽曲に与えているとはいえ、それだけでは説明のつかない無敵感がここにはある。
僕が考えている理由が一つある。それは作品タイトルにもなっている、彼女が生まれた’89年。その世代的な感覚には、当然80年代を懐古する気持ちは無く、おそらく憧れもない。だから逆にその雰囲気を、気負いなく表せた。つまり、その時代を客観視でき、かつ冷静に楽曲へ反映出来たからこそ、フレッシュな80sを体現することが出来たのではないか。
余談になるが、日本に置いては、この年生まれは”ゆとり世代”の始めと言われ、特にスポーツ選手などを筆頭に、過去の時代を一新する活躍をしている方が多数いる。僕は、彼らは過去をある意味、無頓着に捉える事ができているのだと考えている。結果、その人の感性に無重力感を与えているのだ。
言うなれば、過去の歴史に思い入れを抱かないからこそ、フリーダムなアプローチが出来るということだ。そして、彼女の書くリアリティーの有る歌詞も見逃せない。本作からのファースト・シングル”shake it off”~気にしてなんていられない!~ なんて歌詞だろう。世界中の人が簡単に繋がれる今だからこそ、このメッセージは何よりヘヴィーに伝わってくる。でもみんな思っているだろうその気持ちを、ポップで、ダンサブルな楽曲に合わせて歌う。一週間で100万人以上の人がテイラーの作品にアクセスしたという結果。それは必然だったのだろう。