透明感の中に東京を写したバンドは、そうはいないと思った。ロックバンドが同タイトルを歌うことは、当然のことになって久しいが、普通なら東京への思いや、現実とのギャップを表現してしまう。でも彼女らは東京を横目に、季節の移ろいと、あなたへの思いを綴る。ノイジーなギターは変わらず鳴り響き、サウンド的にも、きのこ帝国の色が出来上がりつつある。
今回も特筆すべきは佐藤の歌声で、初期のたどたどしく儚さを感じさせるものから、息遣いに力強さと甘美さを兼ね揃えたボーカルに変化している。何なのだこの進化は。おそらく、この人は音楽の魔法を手に入れつつあるのだろう。
佐藤の歌声というミルクに、あーちゃんのギターでチリペッパーがふりかけられる。かき混ぜられるたびに、そのフレイバーが僕らの心の中にある何かを突き動かす。さらにコーラスのキュートさも見逃せない。
僕は正直、きのこ帝国はマニアックにいい曲を出し続けるバンドだと思っていた。でも、この曲で様相が変わった。より多くの人に伝わって欲しい、そんな名曲である。