坂本慎太郎 『ナマで踊ろう』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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ex.ゆらゆら帝国、坂本慎太郎のソロ。聴く度、あまりの気持ちよさに何度眠りに落ちそうになったか。ジャズテイストな曲や、漂うサイケデリック感と共に多彩な楽曲が脳を回り、視界に靄がかかっていく。その先に見えてくるのは、妙に楽しげな南国。そう思わせてくれるのは、バンジョーやコンガなどの楽器が奏でる、踊りだしたくなるリズムやメロディがあるためだ。それに相反して、足元を流れる冷たい空気。さめざめと弾かれるスティールギターの弦がそれを助長し、ちょっとしたホラー映画を観た気分になる。なんか変なとこ来ちまったなと思ったとき、ここは正に僕たちの世界。それをまざまざと見せつけられる結末だった。『ナマで踊ろう』僕らは毎日加工したものを食べて、見て、そこを歩く。生の感覚を失いつつ、過ごしていく。いつしかそれが”義務のように”なった。作品名にはそんな皮肉が込められているのだろう。今の社会性を捉えた「あなたもロボットになれる」を聴けば、もう笑うしかない。ラストの「この世はもっと素敵なはず」では、みんな気が付いてないだけで本当はいい世界なんだよと歌う訳がなく、もっと素晴らしいはずだからこそ今をぶちこわせと歌う。彼のロックに対しての変わらないアティチュードが感じられる作品でもある。