岡村靖幸という天才-ビバナミダで知ったあなたもまだ間に合う入門編 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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岡村靖幸の音楽が僕は大好きだ。

活動してない期間もあったし、全盛期以外はテレビから姿を消していたし、時代的ギャップなどを考えると彼の認知度は世代によりバラバラになる。僕も昔ラジオで聞いたのがきっかけになったくらいで、本当に彼の存在を知るきっかけは少ない。しかし今年に入ってその存在を世に知らしめる為の実に最適なタイアップが生まれた。



現在放送中の深夜アニメ『スペース☆ダンディ』のオープニング曲、これを担当したのが何を隠そう岡村靖幸である。アホでくだらないけどちょっと泣けて男のロマンとスパイスが効いた本作品は今期人気作品の1つである。本作への力の入れ具合は作画などを見るだけでも十分、理解できるが音楽もかなり本気。OPを担当した岡村は勿論、菅野よう子、向井秀徳、ミト(クラムボン)などなど豪華なメンツが作品の世界観に一役買っている。

そんな本作を見る中で僕はふと思うことがあった。

「アニメ大好きな若い世代や所謂ファンではない人間にビバナミダは、岡村靖幸はどんな風に響くだろう?」

動画のコメントなどを見てると賛否両論ではあるものの、どちらかと言えば好感触な気がする。
伝わってくれて嬉しい。
どうして彼の音楽は現代においても多くの人間の心を掴み、離さないのだろう?その理由と魅力を語りながら、今回はビバナミダで知ったあなたもまだ間に合う!岡村靖幸入門編!的な話をしよう。


まず初めに彼の音楽の魅力を考えた時に、恋と青春の矛盾に真っ向勝負を挑むメッセージ性の強さが挙げられる。僕らを取り巻く日常に、自然に、または奇跡的に存在する恋。それはキラキラと輝くロマンチックな生き物である。しかしその裏側には人間本来の欲望が存在している。「あの子を自分だけのものにしたい。どうして僕に振り向いてくれないのか?無茶苦茶にしたい。」・・人間なら誰しも考えてしまうことだ。それはキラキラとは正反対のある種、残酷な生き物である。
岡村靖幸はその両方を見逃さずに、ピュアネスもエグさも極限まで突き詰めて表現してくれる。しかもその純度は高校生の恋のような若さと輝きを永遠に維持している。ピュアネスをピュアネスとしてまっすぐに歌い上げることで、エグさはエグサとしての意味を持つことが出来る。逆も然り。巷に溢れる一見すれば上辺だけをなぞる下世話なポップスの恥ずかしい部分をエグサでコーティングする仕事が岡村は本当にうまい。だから岡村のポップスは信用できる。何よりも強いあの時期特有の自己愛に満ちたナルシシズムに満ちた思いを全身全霊で歌い上げることで彼の音楽とその歌は永遠の青春を謳歌し続けているのだ。そこに僕は惹かれる。だからどんな年代の人が聞いてもきっと伝わる。





メッセージ性だけで岡村の魅力を語ることは出来ない。もう一点考え得る魅力はあの独特の歌唱法であろう。
岡村靖幸は本当に歌のうまい歌手である。所謂『歌がうまい』と言われる歌手の定義はなんだろうか?僕はファルセットがどうこうの話はよくわからないから感情論で語ってしまう。一度聞いたら忘れらない声を持ち、なおかつその歌声から人間くさい本性が垣間見え、どんな歌も自分のものに出来る才能がある歌手が僕が思う『歌がうまい』歌手である。



上記の動画を見れば、僕の言ってる非常に曖昧で伝わりにくい事が少し伝わると思う。クセもアクも強いけどきっと伝わる人には伝わる歌い方。最終的には好き嫌いで別れてしまうだろうけど、これだけ人間臭くて誰にも真似できないオリジナリテイな魅力を持った歌い方って珍しい。
さらに彼はステージでダンスもこなす。マイケルジャクソンみたいな、そのキレキレの動きは今でも全く衰える気配を見せない。そしてそのバックで流れるロック、ファンク、R&B云々を織り交ぜたミクスチャーなJPOPの音が異様な中毒性と高揚感を帯びながら、脳と体にまるで血液のように流れだす。

これら全てが岡村靖幸の音楽の概要である。
と僕が語った所で駄文長文になってしまうので、とりあえずビバナミダで気になった方は過去の作品を聞いてみてくれると嬉しい。時代を感じる、古臭いかもしれないけどそれはイコールカッコ悪いじゃない。ベストでもいいし、オリアルならDATEや靖幸を聴くのが適当かと。

余談だが、ミスチル桜井は「第二の岡村靖幸になりたい」と言ったこともあるらしい。あの国民的バンドのボーカルが敬愛するほどの魅力を岡村靖幸は持っているのだ。彼に影響を受けた音楽家はそれこそ星の数ほどいる。有名所ではスガシカオや平井堅など。最近ではベースボールベアーのボーカル小出もその1人である。尾崎豊とデュエットをしたこともある。
また、他アーティストへの楽曲提供を数多くこなし、ヒットを飛ばす敏腕プロデューサーとしての才能も岡村は持っている。渡辺美里や川本真琴などの名曲の一部は彼の作曲、編曲である。
歌って良し、踊って良し、曲を作っても良し、高身長、整った顔立ち・・・神は一体どれだけの才能を彼に与えたのか?(もちろん努力もしてるだろうが)語り始めたらその伝説の数々はキリがない。
とにかくそれくらい偉大で影響力のある天才肌の人物なんだってことは知っておいて損はないと思う。

最期に。彼を好きになって、色々過去を辿って行くと実は闇もあるんだけど(今回は入門編だから割愛)まずは音楽をまっすぐに聞いてほしい。彼がやった行為は許されることではないし、永遠に消えない罪、揺るぎない事実であろう。しかし、音楽に罪はない。そして彼は何度でも蘇り、いい音楽を届けている。この事実もまた揺るぎないものだろう。いい音楽はいい音楽として私情も時代も無視して独立して存在している。
どうか、現代のどこにも存在しない、誰にも真似できない岡村靖幸の世界にあなたも触れてみてほしい。

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