奥田民生『O.T.Come Home』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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奥田民生を表すのに日本のロックの王道という言葉は、的を得ているのだが些か違和感がある。僕の持っているイメージはどうしてもマイナーコードの民生だし、それでも100%メジャーな戦いをする特異なロックミュージシャンだと思っている。今作は全ての楽器を彼が演奏している上に、民生の黄金律がふんだんに盛り込まれている。この作品にはソロ活動の集大成的な意味も込められているのだろう。『フリー』という曲から始まり、自由になれ!という言葉がロックンロールとして鳴らされる。それでも未来はわからない不安感を含め、誰もがわかるような感覚を端的に表現してロックする。恐らくこの様な単純明快なアンサーを若手バンドが紡ぎ出しても説得力が出てこない、民生自身が体現してきた歴史がその理論を絶対的な答えにする。わからないことだらけだが、自由になれることだけははっきりわかる、それをロックの文脈で語っていることがこの作品の素晴らしさだ。ユニコーンを超えるのではなく、奥田民生という存在を超える為に、全ての演奏を行ったと思う。それ自体がバンドを超えようとする方法論だったのだ。『O.T.Come Home』とは家にいる様な感覚で、何の武器も用意せず音楽を生み出すことに近いニュアンスがあると思う。奥田民生くらいのアーティストになると生身で表現する事が最も重要だし、それでこそ本当のロックスターなのだ。