大失敗!260万かけて自費出版し全く売れなかった小説紹介! | タケヒト、統合失調症を乗り越えて働く男の日記

タケヒト、統合失調症を乗り越えて働く男の日記

29年前に発症した統合失調症をほぼ克服し元気に障害者として働くある男の毎日を綴った日記です。

読んでくれてありがとうございます飛び出すハート

 

元気な障害者のタケヒトですニヤリ

 

障害の話も時々交えながら、元気な日々の毎日を豊かにする、

 

多種多彩な話を紹介していきます!!

 

しばしの間お付き合いください照れ

 
 
 

こんにちは。

 

小説紹介今回は第1章 6話です。

 

以下本文

 
 

                   6

 

 アパートへ帰ると博樹はキッチンにある萎れた彼岸花をまず捨てた。

 そしてきょう起こった事を整理するかのように思い出した。

 「俺に必要な物、俺に必要な物・・・」

 すぐには考えつかなかったので参考までに他人に必要なもの

 聞いてみようと思った。

 今すぐに連絡が取れる相手は多枝子だけである。

 携帯でLINEを開き聞いてみた。

 

 「多枝子様、あなたに今必要な物は何ですか?」

 

 返事はすぐ帰ってきた。

 

 「お父さんの笑顔」

 

 文面をじっと見つめしばし考え込んだ。

 

 翌日秀夫の病室に御神の姿があった。

 

 「いや、それがよぉぉ、弟のバカ鶏小屋に猫放り込みやがってよぉぉ。

 とんでもない大騒ぎ!

 さあ猫を捕まえろって、猫捕まらないものだから、鶏逃がせって!

 いやいや猫を追い出したら今度は、逃がした鶏を捕まえろって

 校庭中駆けずり回ってよ! その時の先生の顔ときたら・・・」

 

 「ハッハッハ」

 

 それほど面白い話ではなかったのだが、博樹の熱意が伝わったのか

 秀夫は手を叩いて喜んだ。

 相手の反応がいいと話し手も気分がいいものだ。

 博樹も少しテンションが上がった。

 その時ちょうど多枝子が病室を訪れた。

 

 「御神さん来てらしたのですか?」

 

 「おお!今日は仕事が休みなもんでよ」

 

 決まった休みはなく仕事を入れてない日はほぼ休みだ。

 

「多枝子!御神君の弟が・・・はっはっはっは、ゴホッゴホッ」

 

 笑った後深く咳込んだ。博樹はまずかったかなと少し焦った。

 

 「あ・・すいません」

 

 「お父さん横になって」

 

 多枝子は秀夫に促して布団をかけた。

 

 「ああ、今日は楽しかったよ」

 

 横になって落ち着いた秀夫は少し高いトーンで語った。

 

 「ええ。こんな話でしたらいくらでもありますよ。

 そうだ!今度は隣町の健三の話しますよ。」

 

 「楽しみにしているよ」

 

 期待されるというのも悪い気はしない。近いうちに来ようと決めた。

 

 「じゃあ」

 

 今日のところは切り上げることにした。

 多枝子と二人きりになった帰り路何から話をしようか戸惑う博樹に対して

 話を切り出したのはまた多枝子だった。

 

 「父のあんなに笑った顔久しぶりに見ました」

 

 そういう多枝子も嬉しそうな安堵の表情にも見える笑顔を見せた。

 

「このくらいの事でしたらいつでも」

 

 多枝子の喜ぶことならお安い御用と言いたかった。

 

 「御神さんは私に必要な物をくださるのですね」

 

 少し真剣なまなざしの笑顔で多枝子はこちらを見つめた。それに少し興奮して答えた。

 

「はい!なんなりと申しつけてください!私は多枝子さんの為なら・・・」

 

 話を塞ぐように多枝子は語った。

 

 「待って!私はあなたに何も返せません」

 

 意表を突かれたように博樹はたじろぎながら・・・

 

 「いや・・・何も要りません・・・いや・・・いりません」

 

 多枝子の気持ちが丸ごと欲しかったがそれを口にするのは下品な

 気がして博樹はそう返した。

 

 「・・・それでしたら・・・また甘えてもいいですか?」

 

 「はい」

 

 即座に答えた。

 アパートへ帰る足取りは軽い。

 昔のヒットソングを鼻歌で歌いながら博樹はアパートへ着いた。  

 冷蔵庫からビールを取り出しまず一口。

 今日の出来事を思い出して身悶えした。

 

 「また甘えてもいいですか・・・」

 「う~~~~」

 「甘えて!甘えて~~~ん」

 

 気持ち悪く上体をくねらせた。そこでタイミングよく携帯に着信が入った。

 派遣会社からだった。

 「御神さんのご希望のバイト見つかりましたよ。今度はサボらないでくださいね」

 「はいっ!もちろんです。バリッバリ働きますよ」

 ご機嫌でビールをグイっと飲み干した。

 

 翌日製本工場で黙々と博樹は働いていた。

 この工場は印刷物を機械で裁断し手作業で並び替えをした後、

 また機械で製本し仕分け出荷するという工程の工場だ。

 昼休みのチャイムが工場内に鳴り響いた。

 

 キーンコーンカーンコーン

 作業員が十数名の工場なので、二階の一室が休憩所となっている。

 休憩所でコンビニ弁当を食べた後バイト仲間が話しかけてきた。

 

 「ねえ御神さん。楽な割には時給よくて、いいバイトでしょう?

  俺このバイト好きなんだよね」

 

 髪の毛を茶色に染めた今時の若者だ

 

「ああ・・・そうだな。俺もそう思っていたんだけど・・・」

 

 若者は続けた

 

 「不満なんですかあぁ。人間楽で気ままが一番だと思いますよ」

 

 「きままねえ~~。悪い、煙草吸ってくるわ」

 

 今置かれている現状を不思議に思う。

 工場で挫折した後は何をやってもしっくりいかず、気楽、

 気ままが一番だと思っていた。

 責任や重圧などもうごめんだと思っていたが、

 なぜか納得できない自分がいた。

 煙草を吸いながら心の声が響く

 

 【こんなことで彼女やお父さんを守れるのかぁ・・・いや

 ・・そもそも別に付き合っている訳じゃないし・・・】

 

 胡麻化そうとする自分に秀夫の言葉が回想された

 『曖昧な気持ちで生きているほど無駄な事は無いよ』

 

  その言葉に答えるように意志が固まっていく

 

 「曖昧な気持ち・・・いや!曖昧じゃない!俺はきっと彼女が好きだ」

 

 夢の中で一目見た時から何故か惹かれていた。

 マイペースで揺らぎのない真っ直ぐな性格。

 女性に不器用な博樹にはまぶしく映った。

 

 博樹にないものを持っている。

 年の差など超えた魅力が多枝子には在った。

 博樹は初めてはっきりと自分の気持ちを確認した。

 

 次の日ハローワークに御神はいた。

 

 「どんな仕事でもいいから適当に見つくろってくれよ!

 何でもやるよ!」

 

 躍起になる博樹をよそに職員は淡々と質問を投げかけた。

 

 「資格とかは何かお持ちですか?」

 

 「・・・資格なんかなくたって出来るだろう!やる気だよ!やる気!」 

                      

 職員は笑いながら答えた

 

 「クスっ、仕事がない訳ではないですよ」

 

 求人票のコピーを4枚出してくれた。

 
 
 
 
 
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