大失敗!自費出版で大損した作品無料紹介! | タケヒト、統合失調症を乗り越えて働く男の日記

タケヒト、統合失調症を乗り越えて働く男の日記

29年前に発症した統合失調症をほぼ克服し元気に障害者として働くある男の毎日を綴った日記です。

読んでくれてありがとうございます飛び出すハート

 

元気な障害者のタケヒトですニヤリ

 

障害の話も時々交えながら、元気な日々の毎日を豊かにする、

 

多種多彩な話を紹介していきます!!

 

しばしの間お付き合いください照れ

 
 
 
 
 
こんにちは!
 
小説の紹介しますね。
 
以下本文
 
 
                 3
 

名古屋市にあるやや高級そうなマンション。

いや億ションか?という場違いなところに博樹は来ていた。

バイトだから仕方あるまい。

 

 

 504号室のチャイムが鳴り響いた。

 

 ピンポーン 

 

 「おはようございます!ニコニコ引越センターです。」

 

 「はーい」と若い女性の声がして近付いてくる足音の後

入り口のカギが開いた。

 

 「はいどうぞ」と扉を開けて迎え入れてくれたのに続いて

バイトのリーダーがお約束の挨拶をした。

 

 「本日はこの三名で・・・」

 

 「あああああああ!」

 

 バイトのリーダーが言い終わらないうちに博樹は

すっとんきょうな声を上げた。

 

 「何だ、バイト!いや御神君」

 

 目の前で身を乗り出してドアを開けているのは間違いなく

 

昨日の夢に出てきた女性だった。

 

 「貴方昨日の・・・」

 

 「何ですか⁉」

 

 相手は何も知らない様子だった

 

 「失礼いたしました。本日はこの三名で作業させていただきます。」

 

 女性は気を取り直したように

 

 「よろしくお願いしますね」

 

 と笑顔を見せた。もう一度博樹に目を配りやや怪訝そうに

奥へ引っ込んでいった。

 

 彼女の部屋のリビングで、リーダーが彼女と話をしている。

博樹は隣の寝室でハンガー掛けのついた段ボール箱に、

ハンガーに吊るされている洋服を入れる作業をしていた。

一つ一つ箪笥から出して丁寧に掛けていったが、

隣が気になって仕方がない。

手は動かしながら意識は隣の部屋にあった。

いわゆる聞き耳を立てるというやつだ。

 

 

リーダーはバイトには厳しいがお客さんには愛想がいい。

どんな人にもすぐ溶け込める才能の持ち主だ。

 

 「そうなんですかぁ。学生さんなんですね。お勉強大変そうですね。」

 

 話を聞きながら博樹は心の中で突っ込んでいた。

 

 【勉強が大変なんてどうでもいい。どこの大学なんだ。いや高校?

・・・昨日の夜は・・・いやいや】

 

 たまらず彼女に話しかけたくなったが、話題の糸口がない。

それにリーダーが見ている前で勝手にお客様と話なんてできっこない。

 

 「あの・・・」

 

 「何だね、御神君」

 

 「・・・この段ボールは・・・」

 

 当たり前のことを当たり前に答えてくれた。

 

「もちろん運んでくださいな」

 

 「いや・・・運ぶのですね・・・はい」

 

 本当はもっと気の利いた話がしたかったのだがお客様と

日雇いバイトの関係ではこのぐらいが精いっぱいだった。

 

「丁寧に車に運んで!」

 

 リーダーはわかっていることを念押しした。

 

 

 

 表に駐車してある2トントラックの荷台に段ボールを押し込み

助手席に足を運んだ。ふとドアに手をかけるとドアが開いた。

普段は鍵を閉めているはずなのだがたまたま忘れたのだろうか。

ラッキーとばかりに助手席に乗り込み煙草を一服した。

 

 

勝手に休憩などとれば叱られるのはわかっているが見つからなければ

大丈夫。博樹のいつもの考え方だ。

 

 「ちょっと一本だけ勘弁してくださいね」

 

 そう言いながら「ふう」と煙草に火を点け煙を吐き出したその先、

ダッシュボードの上に作業指示書というものが置いてあった。

 

作業指示書というのはどこのお客様のどんな荷物をどこへ運ぶか

詳細が書かれた書類のことだ。

 

 

博樹は思わず手に取った。引っ越し先の住所が書いてある。

 

 「愛知県名古屋市緑区・・・」

 

 これはいいものを見つけたとばかりに博樹は何度も復唱した。

 

覚えるつもりだ。

 

 

 

 「おいバイト!何サボっているんだ!きさまはもういい!!!」

 

 普段リーダーが車に降りてくることなどめったにないのだが

この日は勝手が違った。

事実上のクビである。

 

リーダーの権限で作業者を送り返すこともできるのだ。

 

見つからなければいいという博樹の緩慢な姿勢が招いた

当然といえば当然の報いである。

 

 早い時間からアパートに帰ることになった博樹だが、

反省するでもなく冷蔵庫のビールを取り出しプルタブを開けた。

 

キッチンには彼岸花が十数本ほど残っている。

水を差しているのがよかったのかまだ花も葉も生き生きとしている。

 

 

博樹はビールを飲みながら暗記した住所を紙に書き留めた。

 

 「確かめなきゃ・・・一昨日の事実を・・・いや、何が知りたいのだろう俺は⁉」

 

 「とにかく会わなきゃ」

 

 

 

 

 沙羅多枝子(さらたえこ)彼女の名前だ。

 

次の日博樹はメモを片手に多枝子の家を探して歩く。

JRの駅から歩いて5分ほどの小さな公園の向かいのアパート。

 

億ションからこんな小さなアパートに引っ越すなんて何かの

事情があったのだろうか。

そんな詮索もしたくはなったが、それ以前に彼女が何者なのかを

知りたかった。

 

博樹にしてみれば彼女がこの世のものではないような感覚さえ

している。

夢で片付けるにはあまりにも偶然過ぎるしあまりにもリアル

すぎる。

仮に夢だとしてもあまりにも鮮明に彼女の顔を覚えている。

間違いなく今から行くアパートに住んでいる沙羅多枝子だ。

世の中には似た人が2人はいるというが空似だとは考えにくい。

そのぐらい声までもはっきり記憶していた。

なぜ彼女が自分に気付かないのか。

いつまで惚けているのか。

まったく今置かれている状況が理解できなかった。

 

しかしもし本当に自分のことを知らないとすれば全ては失礼に当たる。

そんな遠慮が博樹の行動を消極的にさせていた。

 

 「えーっと・・・お、ここだ」

 

 多枝子は二階建てアパートの二階の隅の部屋だ。

ドアにもポストにも表札が掛かっていなかったため本人を

確認するまで此処の住人かどうかは定かでなかった。

 

ドアの前で少し考えた後アパートの前で本人の姿を確かめてか

ら話をしようという消極的な結論に至った。

今の時刻は12時48分。

昼食を済ませて表に出てくるのにはちょうどいい時間だ。

今日は天気もいい。

 

 

 

ふと我に返り、これではストーカーではないかということに

ようやく気付いたが、

それ以上に事の真偽を確かめたいという気持ちが強かった。

 

 

博樹の言い分では二人はもう顔見知りだ。

しかし普通に挨拶するのには少し勇気がいる。

ジレンマに耐えながら20分ほど電柱の陰で多枝子を待ち続けた。

 

 しばらくしてドアが開きジーンズにカーディガン姿の

多枝子が姿を現した。

手際よく鍵を閉めトートバックに鍵をしまった。

姿勢の良い歩き方で階段へ向かいカツカツと階段を降り始めた。

博樹は見つけたという達成感とそれからどうしようという不安感

で少しそわそわした。階段を下りた彼女はこちらには全く気付く

素振りもなく、先ほど博樹が歩いてきた道を通って駅の方へと

向かった。

 

 

 

 

 駅の真向かいは大手チェーンのスーパーとなっている。

 

夜の買い出しだろうか。

 

スーパーの入り口を入り脇目もふれずに生鮮食品の

コーナーに向かった。

博樹に気づく様子は全くない。

博樹は探偵にでもなった気分で尾行を続けた。

 

 

 「なんで野菜ばっかりなんだ・・・ベジタリアン?何かの宗教か?

肉を食わない宗教は・・・あれ、肉を買った。

宗教はやっていないと・・・いやいや・・・そもそも俺は何を知りたいんだ?」

 

 

 博樹は自分自身が何をやっているのかわからなくなっていた。

 

しかし真実を知るまでは引くに引けない思いでいた。

彼女は手際よく食品をカゴに入れて立ち去っていく。

 

 「あ、ちょっと待って」

 

 

 博樹はただ振り回されているだけである。

 

 買い物を済ませた彼女は寄り道もせずまっすぐアパートへと

帰りドアを閉めた。

カチャリと鍵の閉まる音がした。博樹はどうすればいいのか

わからず呆然と家に入る彼女を見送った。

今回わかったことといえばおそらく今晩のメニューは

すき焼きではないかということだけだった。

 

 

 「うーん、ピンポーンも変だよな・・・よし明日だ!

明日はハッキリ聞いてみよう。あの夜何があったのか!

いやいや、そもそもあの人は誰なんだ?」     

 
 
 
 
 
 
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