129人全員死亡、フランクリン探検隊と自らの探検をシンクロさせて綴った、「アグルーカの行方」(角幡唯介)。
遂に! 文庫化。明日買いに行かなくちゃ。
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探検隊全員死亡 極地探検史上最大の謎を追う!
現代の日本で、職業を「探検家」と名乗る人物は、おそらく片手で数えるに足りるほどだと思う。
ノンフィクションライター角幡唯介の著書は、事実を取材して文章を綴るいわゆるノンフィクション小説とは一線を画す。

彼自身が探検家であり、自らの探検を物語とするからだ。
だから探検のないところに著作はない。
アグルーカとはイヌイットの言葉で「大股で歩く男」を意味し、かつて北極にやってきた探検家の何人かがこのように呼ばれたそうだ。
この小説は129人全員が死亡した、19世紀の英国の探検家フランクリン隊が見た北極圏を描いている。

ただし、視線は著者角幡のものである。
そう、当時北極圏という地図なき世界と戦いついに還らなかった人々の足取りを、著者自らが実際に徒歩で追って記録したノンフィクションなのだ。
フランクリン隊の足取りと、それを追う現在の自分の状況を交互に綴ることにとって、19世紀の北極圏の様子がよりリアルに見えてくるから不思議だ。

取材を越えた生死を賭けた探検によって描かれる世界は、ひとたびハマると読んでいる自分も消耗していくので要注意だが、読み終えた後、長旅を終えてホッとしたような安堵感と充実感を得られる、探検家ゆえに書ける一冊だと思う。



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